前科持ちはバレる? 就職などへの影響や逮捕後の対処法
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令和5年に千葉県木更津市内で発生した犯罪は1320件でした。
犯罪の前科が日常生活においてバレるリスクは小さいですが、何らかのきっかけでバレてしまうこともあります。
本記事では、前科がバレるケースやバレた場合の悪影響、前科による悪影響を回避する方法などを、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
出典:「木更津市統計書(令和5年版)」(木更津市)


1、前科がバレる可能性は低い
犯罪の前科は、バレてしまうとさまざまな悪影響が生じますが、実際にバレる可能性はそれほど高くありません。
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(1)前科とは
「前科」とは、刑事裁判によって有罪判決を受けた経歴のことです。有罪判決が確定した時点で、前科が付きます(執行猶予付判決の場合も同様)。
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(2)前科と前歴の違い
前科と並んで、刑事事件に関する経歴として挙げられるのが「前歴」です。
「前歴」とは、犯罪捜査の対象になった経歴をいいます。たとえば、逮捕歴や取り調べを受けた経歴などが前歴に当たります。前科は有罪判決が確定した場合に付きますが、前歴は不起訴や無罪の場合でも残ります。
前科とは異なり、前歴は必ずしも「犯罪者」であることを意味しません。しかし現実には、前科と前歴を同じようなもの(「犯罪歴」など)と認識している人も多く、前歴がバレただけで不利益を被るケースもありえます。 -
(3)前科情報は公開されていないため、他人が確認することは難しい
前科や前歴に関する情報は、一般に公開されているわけではありません。
前科については、刑事裁判の訴訟記録を確認すれば分かります。しかし、大々的に報道された場合などを除けば、事件を特定することすら難しく、一般人が訴訟記録にアクセスすることは困難です。
したがって、他人が前科情報を確認することは難しく、前科がバレるリスクは低いと考えられます。
2、私生活において前科がバレるケースは?
前科があったとしても、他人に対して自分から前科を報告する義務は原則としてありません。したがって、前科がバレるケースは少ないですが、以下のようなきっかけで前科がバレてしまうことがあります。
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(1)事件が実名報道された場合
処罰の対象となった刑事事件が実名報道された場合は、その報道の記録が半永久的に残ります。
近年では、インターネットを通じて重大事件が拡散される傾向にあるため、実名報道の情報を消し去ることはできません。
就職活動やプライベートの交流の中で知り合った人に、氏名などで検索された結果として犯罪報道の事実を知られ、前科がバレてしまうことがあります。 -
(2)インターネット上に犯罪歴がさらされた場合
刑事事件を起こした当時は実名報道がなされなかったとしても、知人などによって犯罪歴がインターネット上にさらされてしまうケースがあります。
前科を勝手にさらす行為は、原則として名誉毀損に当たるため、掲載先のサイト管理者に対して前科情報の削除を請求できます。
しかし、インターネット上に掲載された情報はあっという間に拡散されるケースが多く、そうなるとすべての情報を削除することはできません。インターネット上で犯罪歴が拡散された場合は、就職活動先や知人にその事実を知られてしまうリスクが高くなります。 -
(3)履歴書の賞罰欄に前科を記載した場合
就職活動などの際には、履歴書の提出を求められることがあります。
履歴書に「賞罰」の欄が設けられている場合、前科があればその内容を記載しなければなりません。前科があるのに賞罰欄へ記載しないと、内定取り消しや懲戒解雇のおそれが生じます。
履歴書の賞罰欄に前科を記載すれば、当然ながら提出先の担当者には前科があることがバレてしまいます。特に就職活動では、前科があることが不利益に考慮され、内定を得にくくなる傾向にあります。
なお前歴については、履歴書に賞罰欄が設けられていても記載する必要はありません。有罪判決が確定した前科のみ、賞罰欄に記載する必要があります。
3、前科によって生じる影響・デメリット
前科があると、以下のような悪影響やデメリットが生じてしまいます。
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(1)一部の職業に就くことができない
以下の職業については、前科があると資格制限が生じ、就くことができなくなります。
資格制限の対象となる職業 資格制限が生じる刑 資格制限の効果 医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科医師、薬剤師 罰金以上 - 免許を与えないことがある
- 免許の取消処分または3年以内の業務停止処分を受けることがある
歯科衛生士、獣医師 罰金以上 - 免許を与えないことがある
- 免許の取消処分または一定期間内の業務停止処分を受けることがある
学校の校長、教員 罰金以上 - なることができない
一般職の公務員、地方公務員 禁錮以上 - なるこことができない
- 選考を受けることができない
- 失職する
一級建築士、二級建築士、木造建築士 禁錮以上
※建築士法違反、または建築物の建築に関する罪については罰金以上- 免許を与えない
- 免許の取り消し
宅地建物取引士、不動産鑑定士、業務管理主任者 禁錮以上 - 登録を受けることができない
- 登録の消除(取り消し)
建設業者 禁錮以上 - 許可しない
- 許可の取り消し
古物商 禁錮以上
※古物営業法違反や刑法の窃盗罪・遺失物等横領罪など、一部の犯罪については罰金以上- 許可しない
- 許可を取り消すことができる
警備員 禁錮以上 - なってはならない
土地家屋調査士 禁錮以上 - 資格を有しない
- 登録の取り消し
弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士 禁錮以上 - 資格を有しない(なることができない)
中小企業診断士 禁錮以上 - 登録の拒否
- 登録の取り消し
通関士 禁錮以上 - 許可してはならない
- 許可の取り消し
生命保険募集人 禁錮以上 - 登録の拒否
保育士 禁錮以上 - なる事ができない
- 登録の取り消し
会社の取締役、監査役、執行役 禁錮以上(執行猶予中の者を除く) - なる事ができない
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(2)前科がないと嘘をついていた場合、内定取り消しや懲戒解雇のおそれがある
本当は前科があるのに、前科がないと嘘をついて採用された場合には、前科が判明した際に内定を取り消され、または懲戒解雇されるおそれがあります。
履歴書に賞罰欄が設けられていれば、その欄に前科を記載しなければなりません。
これに対して、履歴書に賞罰欄が設けられていない場合や、履歴書の提出が不要である場合には、積極的に前科を告知する必要はありません。
ただし、採用面接などの際に前科の有無を質問されたら、正直に答える必要があります。嘘をつくと、内定取り消しや懲戒解雇のリスクが生じるのでご注意ください。 -
(3)賃貸物件への入居を拒否される
住居や店舗などとして賃貸物件を借りようとする際に、貸主に前科がバレてしまうと、入居を拒否されることがあります。
「前科者が入居した」との悪評が広まることで、他の入居者に悪影響を及ぼしたり、新たな入居者が付きにくくなったりすることを避けたいと貸主が考えるためです。
貸主に対して前科を告知する義務はありませんが、インターネット上に犯罪報道などの前科情報が残っている場合は、入居審査の際に貸主が検索すると知られてしまうことがあるのでご注意ください。 -
(4)再犯をすると刑が加重される
懲役の前科がある者が、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内にさらに罪を犯し、有期懲役に処されるときは「再犯」として扱われます(刑法第56条第1項)。
また、併合罪のうち懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかった場合も、上記の期間中は同様に再犯となります(同条第3項)。
再犯の場合、懲役の長期(上限)が2倍となり、通常よりも量刑が加重される点に注意が必要です(刑法第57条)。
4、前科による悪影響を回避する方法
前科による悪影響を回避するためには、検察官による起訴を避けるために全力を尽くすことが重要です。起訴されてしまうと有罪となり、前科が付く可能性がきわめて高いので、不起訴処分を目指すことが大切になります。
罪を犯したことが事実であっても、比較的軽微な犯罪で情状が良ければ、不起訴となる可能性は十分あります。そのためには、被害者との示談や謝罪文の作成など、更生に向けた真摯な姿勢を見せることが大切です。
早い段階で弁護士に依頼することで、不起訴を目指したさまざまな弁護活動が可能となります。犯罪行為をしてしまい、前科が付くことを避けたい場合には、速やかに弁護士へご相談ください。
お問い合わせください。
5、まとめ
日常生活の中で前科がバレる可能性は低いですが、履歴書やインターネット検索などをきっかけにバレてしまうこともあります。
前科がバレると「前科者」のレッテルを貼られ、さまざまな場面で悪影響が生じます。前科による悪影響を避けるためには、弁護士のサポートを受けながら不起訴処分を目指しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、刑事弁護に関するご相談を随時受け付けております。罪を犯してしまい、前科が付くことを避けたいと考えている方は、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスへご相談ください。
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