車を相続する手続きとは? 名義変更や必要書類について弁護士が解説
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木更津市が公表している統計資料によると、令和3年度における木更津市内の乗用自動車の台数は、普通車が2万6336台、小型車が2万5696台でした。両方を合わせると約5万台となり、多くの方が移動手段として自動車を利用していることがわかります。
被相続人が車を所有していた場合、車も相続財産に含まれるため、遺産相続の手続きが必要になります。相続した車を自分で使用する場合や売却する場合、または廃車にする場合などケースに応じて必要な手続きが異なってくるため、手続きの流れや必要書類などについてしっかりと理解しておくことが大切です。
本コラムでは、車を相続する際の手続きについて、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
1、車を相続するために最初にすべきこと
まずは、車を相続することになった場合に最初にするべきことや、気を付けたほうがいいポイントを解説します。
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(1)車の名義が誰になっているかを確認する
被相続人が亡くなって相続が開始したら、まずは車の名義が誰になっているのかを確認しなければなりません。
被相続人が使っていた車だからといって、被相続人名義だとは限らないためです。
たとえば車を購入する際に自動車ローンを組んでいた場合には、所有権留保により、車の名義が自動車販売店や信販会社になっていることもあります。
自動車ローンを完済していれば、自動車販売店や信販会社から相続した新しい所有者への名義変更をすることができますが、自動車ローンが残っている場合には、ローンの完済後に名義変更を行うことになります。 -
(2)車の名義変更をしなかった場合はどうなる?
車を相続したにもかかわらず名義変更をしていないと、自らが所有者であることを証明することができないため、車の売却や廃車手続きを行うことができません。
また、そもそも遺産分割協議自体が未了という場合には、自動車は相続人全員による共有財産として扱われることになります。
この場合には、相続人全員の協力がなければ、相続財産である自動車の売却や廃車手続きを行うことができなくなるのです。
このように、名義変更をしていないとさまざまな手続きに支障が生じてしまうため、相続手続きが終わった後は、早めに名義変更を行うようにしましょう。 -
(3)車も相続税の課税対象となる
車も相続財産に含まれますので、預貯金や不動産と同様に、相続税の課税対象となります。
車の相続税評価は、実務上、ディーラーや中古車販売業者の査定額や買取価格を基準にして行うことが一般的です。
相続財産の総額が相続税の基礎控除額(3000万円×+600万円×相続人の数)を超える場合には、相続税の申告が必要になります。
そうなった場合は、ディーラーや中古車販売業者に車の査定を依頼しましょう。
2、相続する車を名義変更する流れと必要書類
以下では、車を相続して名義変更をする場合の、手続きの流れを解説します。
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(1)車を相続する所有者を決定する
被相続人の遺言書があり、遺言書で車を相続する人が指定されている場合には、その人が車を相続することになります。
他方、遺言書がない場合または遺言書があっても車に関しては指定がない場合には、相続人による遺産分割協議で誰が車を相続するのかを決めていくことになります。
遺産分割協議が成立し、誰が車を相続するのかが決まったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成しましょう。 -
(2)車庫証明書を申請
車の名義変更を行うためには「車庫証明書」が必要になるため、警察署で車庫証明書の申請を行いましょう。
車庫のある場所を管轄する警察署に行けば、車庫証明の申請に必要な以下の書類一式をもらうことができます。- 自動車保管場所証明申請書
- 保管倍書の所在図、配置図
- 保管場所使用権原疎明書面
- 保管場所使用承諾証明書
必要書類の準備が整ったら、警察署に出向いて申請を行います。
その際には、念のため認印も持参してください。 -
(3)運輸支局で名義変更
警察署で車庫証明書を取得したら、次は、車の名義変更を行うために運輸支局で手続きを行います。
運輸支局での名義変更の手続きは、誰が車を相続するかによって以下のように異なってきます。
① 相続人がひとりしかおらず、その相続人が車を相続する場合
相続人がひとりしかいない場合には、被相続人の遺産はすべてその相続人が相続することになります。
そのため、通常の遺産相続では必要になる遺産分割協議が不要になります。
この場合に必要になる名義変更の書類としては、以下の書類が挙げられます。- 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 相続人の実印
- 車検証
- 車庫証明書
② 複数の相続人のうちひとりが車を相続する場合
複数の相続人のうちひとりが車を相続する場合には、以下のような書類が必要になります。- 遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 車検証
- 車庫証明書
なお、車の評価額が100万円以下である場合には、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申込書」という簡易な書面でも手続きをすることができます。
また、遺産分割協議成立申込書は車を相続する相続人の実印と印鑑証明書だけで足りるため、他の相続人の協力を得る必要がありません。
ただし、車の評価額が100万円以下であることを確認するために、査定書の添付は必要になります。
③ 複数の相続人で車を共有する場合
車は、単独所有以外にも複数人で共有することも認められています。
車を相続人の共有にする場合には、以下の書類が必要になります。- 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 共同相続する相続人全員の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 相続人の実印
- 車検証
- 車庫証明書
3、名義変更した後の手続きとは
車の名義変更が終了した後は、相続した車の利用方法などに応じて、以下のような手続きが必要になります。
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(1)相続した車に乗る場合の手続き
相続した車に相続人が乗り続ける場合には、自動車保険の手続きが必要になります。
自動車保険に加入するかどうかは、あくまでも任意とされていますが、万が一事故を起こしてしまった場合には莫大(ばくだい)な損害賠償金を請求されるおそれがあるため、一般論としては自動車保険に加入しておいたほうが安心でしょう。 -
(2)相続した車を売却する場合の手続き
車を相続した相続人がすでに車を所有している場合には、相続した車については売却することも選択肢のひとつとなります。
自動車を売却する場合には、通常必要になる書類に加えて、被相続人の戸籍謄本と遺産分割協議書が必要になります。
これらは、相続が発生していることと相続人に車の権利があることを証明するために必要となる書類です。
相続した車を売却する場合には、買取業者の指示に従ってこれらの書類を準備しましょう。 -
(3)相続した車を廃車にする場合の手続き
相続した車が年式も古く売却もできないという場合には、そのまま所有していても自動車税などの負担が生じてしまうため、廃車の手続きが必要になります。
廃車手続きには、故障した車を処分する際に利用される「永久抹消登録」と、長期間乗らない車を一時的に抹消する「一時抹消登録」の二種類があります。
どちらの手続きを選択するかによって必要書類が異なりますので、運輸支局の窓口またはホームページなどで確認してみましょう。
4、相続したい車が複数ある場合はどうなる?
以下では、複数台の車を相続する際の注意点を解説します。
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(1)対象の車ごとに遺産分割の手続きが必要
複数台の車がある場合には、それぞれの車について誰が相続するのかを決める必要があります。
基本的な遺産分割の手続きは車が1台のときと変わりませんが、遺産に漏れがあった場合には再度遺産分割を行う必要があります。
そのため、対象となる遺産の洗い出しは慎重に行うことが大切です。 -
(2)相続税の計算も別々に評価する
複数台の車がある場合には、それぞれの自動車を別々に評価する必要があります。
複数台の車を所有しているような場合には、趣味のための車や高級車などが含まれていることもありますので、しっかりと査定してもらうことが大切です。
一般的にはディーラーや中古車買取業者の査定により相続した車の評価を行いますが、相続した車を売却した場合には売却金額が評価額となります。
相続後に車を売却することを検討されている方は、金額の違いについて注意してください。
5、まとめ
被相続人が所有していた自動車も相続の対象になるため、相続が始まった後は、車検証などの書類から車の名義を確認することが大切です。
遺産相続においては、遺産の評価や分割方法などをめぐってトラブルが生じることもあります。
特殊な財産が含まれていたり、相続人同士の協議について不安があったりする場合には、専門家である弁護士に相談することも検討しましょう。
まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています