死亡後の手続きに優先順位はある? 遺産相続に必要なことは?
- 遺産を受け取る方
- 死亡後の手続き優先順位
親が亡くなるなどして相続が発生した場合には、「なにから手をつければよいかわからない」となってしまう方も多いでしょう。
被相続人が死亡した後の相続手続きには期限が設けられているものもあるため、優先順位をつけて、ひとつずつ進めていくことが大切です。
本コラムでは、被相続人の死亡後の遺産相続手続きの優先順位について、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
1、故人が死亡したときに行う手続き
まず、家族が亡くなった後に発生する遺産相続に関して、代表的な手続きを紹介します。
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(1)葬儀関係の手続き
家族が亡くなった場合には、葬儀を執り行うのが一般的です。少なくとも役所への届出と土葬または火葬は行わなければなりません。
葬儀に関して必要になる具体的な手続きとしては、以下のようなことがあげられます。- 死亡診断書の受け取り
- 死亡届の提出
- 埋火葬許可証の交付申請
- 葬儀会社との打ち合わせ
- 葬儀の実施
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(2)公的手続き
故人の死亡届を行った後は、年金や保険などに関する公的手続き行う必要があります。
代表的な公的手続きとしては、以下のようなものがあります。- 年金受給停止手続き
- 介護保険資格喪失届の提出
- 住民票の世帯主変更届の提出
- 雇用保険受給資格者証の返還
- 国民年金の死亡一時金の請求
- 葬祭費用、埋葬料の請求
- 高額医療費の申請
- 遺族基礎年金、遺族厚生年金の請求
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(3)税金関係の手続き
故人が死亡した後には、相続税や所得税に関して以下のような手続きを行う必要があります。
- 相続税の申告
- 所得税の準確定申告
なお、相続税には、「3000万円+600万円×相続人の数」という基礎控除があるため、遺産総額が基礎控除の範囲内であれば相続税の申告は不要になります。
また、勤務先が1つで勤務先において年末調整を行っている場合や、公的年金による年収が400万円以下でその他の所得が20万円以下の場合などには、準確定申告は不要になります。 -
(4)遺産相続関係の手続き
被相続人の遺産を相続する際に必要となる手続きとしては、以下のようなことがあげられます。
- 遺言の執行(遺言がある場合)
- 遺産分割協議
- 相続放棄、限定承認の申述
- 預貯金の払い戻し
- 不動産の相続登記
- 株式などの名義変更
2、遺産分けにも順番があるのか
以下では、遺産相続を進める際に必要となるもろもろの手続きや事項の優先順位を解説します。
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(1)遺言書の有無の確認
被相続人が遺言書を作成していた場合には、原則として、遺言書の内容に従って遺産分けを行うべきことになります。
そのため、まずは、被相続人が遺言書を残していないかどうかを調査する必要があるのです。
公正証書遺言であれば、公証役場で照会をすることで遺言の有無が判明します。
自筆証書遺言の場合には、自宅内を探したり法務局に問い合わせたりすることで発見できる可能性があります。
なお、自筆証書遺言(法務局保管のものを除く)が見つかったら家庭裁判所での検認手続きも必要になるため、そちらの手続きも忘れずに行うようにしましょう。 -
(2)相続人の調査
被相続人の遺言がない場合には、相続人全員による遺産分割協議に向けて準備を進めていくことになります。ただし、相続人が1名のみの場合には、遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議を行う前には、まずは「誰が相続人であるか」ということ(相続人の範囲)を確定させる必要があります。
遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ有効に成立させることができず、相続人のうちひとりでも欠いてしまうと、遺産分割協議全体が無効になってしまうためです。
相続人の調査では、基本的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や改製原戸籍謄本、除籍謄本などを取得する方法によって、相続人の範囲を明らかにすることになります。 -
(3)相続財産の調査
遺産分割協議は、被相続人の遺産を分ける手続きですので、その前提としてどのような遺産があるのかを調査する必要があります。
一緒に生活していた家族であってもすべての財産を把握しているわけではありませんので、漏れのないように、できるだけ以下のような調査を進めていきましょう。- 預貯金については、被相続人の生活圏内の全金融機関に照会をかける
- 不動産については、市区町村役場で名寄帳を取得する、法務局で登記事項証明書を取得する
- 有価証券については、取引のあった証券会社や証券保管振替機構に照会をかける
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(4)相続人全員による遺産分割協議
相続人調査および相続財産調査が終了した段階で、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決めていきます。
遺産分割協議というと「相続人全員が一堂に会して行うものだ」と思われるかもしれませんが、必ずしも相続人が一堂に会する必要はなく、電話・手紙・メールなど適宜の方法で連絡をとって合意の形成を目指すことも可能です。
遺産分割協議によって相続人全員の合意が成立したら、遺産分割協議書を作成して、相続人全員で署名および実印での押印を行うようにしましょう。 -
(5)遺産分割調停または審判
遺産分割協議(裁判外の交渉)では、相続人全員の合意が得られない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行います。
遺産分割協議と同様、遺産分割調停も相続人による話し合いの手続きであるため、意見の対立が大きい場合には調停が不成立になることもあります。
そのような場合には、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。
審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、適切だと考えられる遺産分割方法を決定します。 -
(6)預貯金の払い戻しや名義変更などの相続手続き
遺産分割協議か遺産分割調停、または遺産分割審判によって遺産分割の内容が決まった場合には、決定した内容に従って、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更などの相続手続きを行います。
3、遺産分割では期限があるものも
遺産分割自体には期限はありませんが、遺産分割に関連する手続きに関しては期限が設けられているものもある点に注意が必要です。
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(1)相続放棄・限定承認の申述
「被相続人に多額の借金がある」、「相続争いに巻き込まれたくない」などの理由で遺産を相続したくないという場合には、相続放棄という手続きをとることによって、遺産を相続する権利を放棄することが可能です。
また、「プラスの財産とマイナスの財産がどのくらいあるのかわからない」、「遺産の一部は相続したいが、すべての借金を背負うのは嫌だ」という場合には、限定承認という手続きをとることによって、相続すべきマイナスの財産をプラスの財産の範囲内に抑えることができます(もっとも、この手続きは簡単ではないので、利用すべきケースは限られてきます)。
ただし、相続放棄または限定承認の手続きには、原則として相続開始を知ったときから3か月以内という期限が定められています。 -
(2)遺留分侵害額請求
一定の範囲の相続人には、法律上、最低限の遺産の取得割合として遺留分が保障されています。
相続人の遺留分を侵害する内容の遺言であっても有効な遺言として扱われますが、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することによって、侵害された遺留分に相当するお金を取り戻すことができます。
遺留分侵害額請求には、相続の開始および遺留分の侵害を知ったときから1年以内という期限が定められています。 -
(3)特別受益・寄与分
生前に被相続人から多額の贈与を受けていた相続人がいる場合には、特別受益の持ち戻しをすることによって、公平な遺産分割を実現することができます。
また、生前に被相続人の療養看護などにより遺産の維持や増加に貢献した相続人がいる場合には、寄与分を主張することによって、公平な遺産分割を実現することも可能です。
このような特別受益・寄与分については、民法改正によって、主張できる期間が相続開始から10年に制限されています。
4、遺産相続の悩みは弁護士へ
遺産相続に関してお悩みや疑問をお持ちの方は、まずは弁護士に相談してください。
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(1)必要な手続きについてアドバイスしてもらえる
家族が亡くなった場合には、葬儀、公的関係、税金、遺産相続などさまざまな手続きが必要になります。
これらの手続きには期限が設けられているものもあるため、必要な手続きをピックアップし、優先順位をつけて処理していかなければ、期限徒過(期限オーバー)によるペナルティーを受けるリスクがあるのです。
多くの方にとって、遺産相続は初めての経験となります。
遺産相続が発生したら、必要な手続きを把握するために、まずは弁護士にご相談ください。 -
(2)遺産相続に関する手続きをサポートしてもらえる
遺産相続に関する手続きを把握したとしても、一般の方ではどのように進めていけばよいかわからないことも多いでしょう。
弁護士であれば、相続人に代わって、相続人調査や相続財産調査を行うことができるため、迅速に遺産分割協議を実施することが可能です。
また、遺産分割協議の場面でも専門家である弁護士が対応するため、特別受益や寄与分の主張、遺産の適切な評価などにより、相続人本人にとって有利な遺産分割を実現できる可能性が高まります。
ひとりで手続きをすることに不安があるという方は、弁護士に依頼することを検討してください。
5、まとめ
家族が亡くなった後は、遺族の方々がさまざまな手続きを行わなければなりません。
膨大な手続きを効率よく処理してくためには、優先順位をつけて処理していくことが大切です。
また、遺産相続に関しては、期限の徒過(期限オーバー)により権利行使ができなくなるものもあるため、大切な権利を失う前にまずは弁護士に相談することをおすすめします。
家族が亡くなり相続が発生した場合には、お早めに、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています