シートベルト不着用の場合の過失割合は?

2025年07月02日
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シートベルト不着用の場合の過失割合は?

千葉県警が公表している交通事故発生状況の統計によると、木更津市において令和6年の1月から12月末までに発生した事故件数は323件で、死者数が3人、負傷者数が409人でした。

道路交通法は、すべての座席においてシートベルトの着用を義務付けています。シートベルトを着用せずに交通事故の被害に遭った場合、損害の発生および拡大に関して、被害者側にも過失が認められ、過失相殺の対象になります。

今回は、シートベルト不着用の場合の過失割合について、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。


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1、交通事故の過失割合とは?

そもそも交通事故の過失割合とはどのようなものなのでしょうか。以下では、過失割合の概要とシートベルト着用の法的義務について説明します。

  1. (1)過失割合とは

    交通事故の賠償額を決める際に、加害者と被害者の過失の割合を考慮することを過失相殺といいます。過失相殺をする際に、被害者と加害者にどの程度の落ち度(過失)があるのかを数値化したものが過失割合になります。

    たとえば、自分の運転する車が停止中に追突された場合、被害者には過失がないため、損害額の100%を加害者に請求できます。しかし、双方の車両が動いている状況では、被害者側にも一定の過失が認められることがあります。

    被害者側に10%の過失割合が認定されると、その分過失相殺され、賠償額も10%減額されてしまいます。適正な補償を受けるには、正しい過失割合を定めることが重要なポイントになります。

  2. (2)シートベルトの装着義務を怠ると被害者側の過失として判断される

    道路交通法では、運転席や助手席だけでなく、後部座席を含むすべての座席でシートベルトの着用が義務付けられています。シートベルトを締めていないと、事故の衝撃で車外に投げ出されたり、社内で強くぶつかったりして、死亡や重傷につながるリスクが高まります。

    そのため、シートベルトを着用せずに事故に遭い、損害が発生・拡大した場合、被害者側の過失として判断されることになります。

    また、運転席と助手席については、一般道・高速道路を問わず着用義務違反に対して、違反点数が加算されます。後部座席についても、高速道路での未着用は違反点数の対象となるため、注意が必要です。

2、シートベルト不着用の場合の過失割合│裁判例

シートベルト不着用の場合の過失割合はどの程度になるのでしょうか。以下では、シートベルト不着用の一般的な過失割合と過失割合が高くなるケース・過失相殺されないケースについて説明します。

  1. (1)シートベルト不着用の過失割合は5~20%程度

    シートベルト不着用の過失割合は、5~20%程度と評価されることが多いです。

    シートベルトの装着は、運転席・助手席だけでなく、後部座席にも義務付けられていますので、後部座席の不着用の場合でも、被害者側に過失割合が生じます。ただし、後部座席でのシートベルト不着用は、運転席・助手席側の不着用に比べて、過失割合が低くなる傾向があり、5~10%程度の過失割合となることが多いです。

  2. (2)シートベルト不着用で過失割合が高くなる可能性があるケース

    シートベルト不着用で過失割合が高くなる可能性のあるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

    ① シートベルトを装着していなかったことで車外に放出されたケース
    シートベルトを装着していた場合としていなかった場合とを比較すると、事故が発生したときに車外放出されるリスクは、シートベルトを装着していなかった場合の方が高いと考えられます。

    車外放出されると硬い地面に頭を打ち付けるなどして死亡または重大な傷害が生じるような事故が起きやすいため、損害の拡大に寄与した割合が高く、過失割合が高くなる可能性があります。

    名古屋高裁平成26年3月27日判決
    【信号のない交差点での出合い頭衝突により被害者が車外に放出され脳挫傷のために死亡した事案】
    裁判所は、死亡原因である脳挫傷がシートベルト不着用により車外に放り出されたために生じたものと認め、被害者の過失が15%と認定されました。


    ② 高速道路でのシートベルト不着用のケース
    高速道路上でのシートベルト不着用は、事故が発生したときに大きな怪我が生じるリスクが高いため、一般道でのシートベルト不着用に比べて、過失割合が高くなる傾向があります。

    名古屋地裁平成29年6月28日判決
    【高速道路上に落下した幌シートを避けようとして、ハンドルを切った結果、ガードレールに衝突し、被害車両の同乗者(被害者)が死亡した事故】
    裁判所は、被害者にもシートベルト非着用の過失があること、被害車運転者には、同乗者がシートベルトを非装着のまま車両を運転し、著しい速度超過や前方不注視の過失があることなどを理由に被害者側の過失割合を60%と認定しました。
  3. (3)シートベルト不着用でも過失相殺されないケース

    シートベルトが不着用であったとしても、以下のようなケースについては、過失相殺はされません。

    ① 加害者の過失が非常に大きいケース
    事故の発生に関して加害者の過失が非常に大きいケースでは、公平の見地から被害者がシートベルトを装着していなかったとしても、被害者側の過失として評価しないというケースがあります。

    大阪地裁令和元年10月2日判決
    【後部座席の被害者が腰ベルトのみ装着し、肩ベルトを装着していなかったという事案】
    裁判所は、本件事故が赤信号を無視して交差点に進入し衝突したことにより生じたものであり、加害者側に著しい過失が認められるため、過失相殺をすることは相当ではないと判断しました。


    ② シートベルト不着用と怪我との間に因果関係がないケース
    シートベルト不着用で過失相殺されるのは、シートベルト不着用が損害の発生・拡大に影響を与えたと評価できるからです。

    そのため、シートベルトの着用をしていても同じような怪我をしていたといえる場合には、不着用と怪我との間に因果関係がありませんので、シートベルト不着用であっても過失相殺はされません。

    名古屋地裁一宮支部平成30年12月3日判決
    【被害者が助手席側後部座席に座っており、シートベルトをしていなかったという事案】
    裁判所は、仮に被害者がシートベルトをしていたとしても、同程度の傷害を負うことになった可能性は否定できないとして、被害者がシートベルトを着用していなかったことが、損害を発生・拡大させたとはいえないと判断しました。


    ③ シートベルト装着義務が免除されているケース
    道路交通法では、病気や障害、妊娠中、著しい肥満などの事情がある場合には、シートベルトの装着義務が免除されています。このようなケースでは、シートベルト不着用で事故が発生したとしても、過失相殺がされない可能性があります。

    東京地裁平成7年3月28日判決
    【被害者が腹囲117cmと著しく肥満していた事例】
    裁判では、シートベルト不着用には相当の理由があると認めるとして過失相殺が否定されました。


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3、弁護士に相談すれば賠償金を増やせる?

以下のような理由から弁護士に相談することで交通事故の賠償金を増やせる可能性がありますので、事故の被害に遭われた方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします

  1. (1)適正な過失割合を主張できる

    シートベルトの不着用などにより被害者側にも過失がある事案では、過失相殺によって賠償額が減額される可能性があります。加害者側の保険会社から提示された過失割合は、必ずしも適正な過失割合であるとは限らず、被害者にとって不利な割合になっているケースも少なくありません。

    そのような場合には、弁護士が、具体的な事故状況や事故態様などを踏まえて、適正な過失割合を主張します。また、早期に弁護士にご相談いただけば、過失割合の立証に必要となる証拠収集のアドバイスやサポートをいたしますので、被害者にとって有利な過失割合を認定できる可能性が高くなります。

  2. (2)慰謝料を増額できる可能性がある

    交通事故の慰謝料には、以下の3つの算定基準があります。

    • 自賠責保険基準
    • 任意保険基準
    • 裁判所基準(弁護士基準)


    どの算定基準で計算をするかによって、慰謝料の金額は大きく異なり、一般的には、自賠責保険基準≦任意保険基準<裁判所基準の順で大きくなると言われています。

    しかし、裁判所基準を利用して慰謝料を請求するには、弁護士に示談交渉を依頼した場合または裁判を起こした場合に限られます。少しでも慰謝料を増額したいという場合には、弁護士への依頼をおすすめします。

  3. (3)示談交渉や裁判の手続きを任せることができる

    弁護士に依頼をすれば保険会社との示談交渉や裁判手続きなどすべて一任いただけます。それにより被害者本人の負担やストレスは大幅に軽減され、弁護士が交渉などを対応すれば、被害者にとって有利な金額で示談できる可能性が高くなります。

    このように賠償額の増額には、弁護士の協力が重要ですので、交通事故に遭われた方は、早めに弁護士に相談するようにしましょう

4、交通事故に強い弁護士の選び方

交通事故の事案を依頼する場合、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。弁護士によって得意とする分野が異なりますので、交通事故の事案を依頼するなら交通事故のトラブルに強い弁護士に依頼するのが重要なポイントです。

交通事故に強い弁護士の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 交通事故問題に対する知見が豊富
  • 交通事故問題の対応実績が豊富
  • 弁護士費用や報酬体系が明瞭


交通事故の事案を弁護士に依頼する際には、上記のようなポイントを踏まえて弁護士を探してみるとよいでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、「交通事故専門チーム」がありますので、経験豊富な弁護士やスタッフが連携して交通事故事案の対応にあたることができます

また、当事務所は、全国各地に拠点を有し、豊富な解決実績がありますので、さまざまな交通事故の事案に対応可能です。初回相談60分無料ですので、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

5、まとめ

道路交通法では、運転席や助手席だけでなく、後部座席を含むすべての座席においてシートベルトの着用を義務付けています。そのため、シートベルト未着用で事故に遭ってしまうと、被害者側の過失として、より不利な過失割合で過失相殺をされる可能性があります。

不利な過失割合が認定されると賠償額も大幅に減額されてしまいますので、適正な賠償額の支払いを受けるためにもまずはベリーベスト法律事務所 木更津オフィスまでお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています