T字路の事故で横から突っ込まれた! 過失割合と請求できる金額
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木更津市が公表している交通事故統計によると、2023年に木更津市内で発生した交通事故件数は444件でした。その事故による負傷者数は585人、死者数は3人となっています。交通事故件数は、年によって多少の変動はありますが、毎年400件前後発生していることがわかります。
交通事故の頻発する場所として交差点があります。特にT字路では、見通しが悪く、一時停止の見落としがあるなどして、事故が起きたときの過失割合で揉めるケースも少なくありません。T字路の交差点で横から突っ込まれた場合、どのような過失割合になるのでしょうか。
今回は、T字路の事故で横から突っ込まれたときの過失割合と争いがあるときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故における過失割合の考え方
交通事故では、過失割合に関するトラブルが生じることがあります。そこで、まずは過失割合に関する基本事項を押さえておきましょう。
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(1)過失割合の意味
過失割合とは、発生した交通事故に対する責任割合を数値で表したものです。交通事故の被害者でも、何らかの落ち度(過失)がある場合には、その過失に応じて交通事故による損害を負担させるのが公平です。
そこで、交通事故では、事故の責任割合に応じて、「過失割合」を定め、損害額の調整を行います。これを「過失相殺(かしつそうさい)」といいます。
過失割合は、交通事故の損害賠償請求において重要な役割を果たします。 -
(2)過失割合の決まり方
過失割合は、基本的には当事者同士の話し合いにより決めることになりますが、その際に参考にされるのが、「別冊判例タイムズ38・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」という書籍です。
これは、過去の裁判例などを踏まえて交通事故の過失割合を基準化したもので、事故類型や事故態様に応じた過失割合の数値が掲載されています。
交通事故実務では、これを参考に過失割合を定めることが多いため、まずはご自身の事故類型・事故態様における過失割合がどのように定められているのかを把握することが大切です。 -
(3)過失割合の重要性
被害者にも事故に関する落ち度がある場合、過失割合に応じて賠償額全体が減額されます。このように過失割合は、最終的に支払われる賠償金の金額にも影響するため、適切な過失割合になるよう、相手の保険会社としっかりと交渉することが重要です。
保険会社から提示された過失割合に納得ができないときは、安易に示談に応じるのではなく、交通事故の実績がある弁護士のサポートを受けながら、適切な過失割合になるよう主張していくことをおすすめします。
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2、T字路直進中に横から右折車に突っ込まれたときの過失割合
T字路直進中に横から突っ込まれたときの過失割合は、事故状況によって以下のように決められています。
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(1)同程度の道幅で相手が左折もしくは右折したケース
同程度の道幅の交差点とは、交差する道路の一方が優先道路および明らかに広い道路以外の道路である交差点を指します。ただし、突き当たり路に一時停止の規制がある交差点を除きます。
このような交差点で、直進路を直進する被害車両(A)が、突き当たり路を右左または左折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=30:70 -
(2)直進道路のほうが明らかに広いケース
「明らかに広い道路」とは、交差する道路の一方がもう一方よりも明らかに幅が広い道路のことをいいます。また、「明らかに広い」とは、運転者が交差点の入り口で、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して分かるものをいいます。
このような交差点で、直進路を直進する被害車両(A)が突き当たり路を右左折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=20:80 -
(3)相手方の進路に一時停止規制があるとき
相手の進路に一時停止の規制がある場合とは、同幅員の交差点において、突き当たり路に一時停止の規制がある場合や、公路と狭路が交わる交差点において、突き当たり路である狭路側に一時停止の規制がある場合を指します。
このような交差点で、直進する被害車両(A)が、一時停止を無視して突き当たり路を右左折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=15:85 -
(4)直進車が優先道路のとき
優先道路とは、道路標識などにより優先道路として指定されているもの、および当該交差点において中央線または車両通行帯が設けられている道路をいいます。
このような交差点で、優先道路を直進する被害車両(A)が、突き当たり路を右左折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=10:90
3、T字路右折中に横から突っ込まれたときの過失割合
T字路を右折中に横からきた右折車に突っ込まれたときの過失割合は、事故状況によって以下のように決められています。
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(1)同程度の道幅で相手が右折したケース
同程度の道幅の交差点の考え方は、前述(2章(1))と同様です。
このような交差点で、直進路を右折する被害車両(A)が突き当たり路を右折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=40:60 -
(2)直進道路のほうが広いケース
明らかに広い道路の考え方は、前述(2章(2))と同様です。
このような交差点で、直進路を右折する被害車両(A)が突き当たり路を右折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたとき、基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=30:70 -
(3)相手方の進路に一時停止規制があるとき
相手の進路に一時停止の規制がある場合は、前述(2章(3))と同様です。
このような交差点で、直進路を右折する被害車両(A)が突き当たり路を右折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=25:75 -
(4)直進車が優先道路のとき
優先道路の考え方は、前述(2章(4))と同様です。
このような交差点で、直進路を右折する被害車両(A)が突き当たり路を右折しようとする加害車両(B)に横から突っ込まれたときの基本の過失割合は、以下のようになります。A:B=20:80
4、過失割合の修正要素と争いがあるときできること
過失割合に争いがある場合、被害者はどのようなことができるのでしょうか。以下では、過失割合の修正要素と被害者ができる対処法を説明します。
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(1)過失割合の主な4つの修正要素
前述したT字路交差点の事故に関する過失割合は、あくまでも基本の過失割合ですので、具体的な事故態様や状況に応じて修正する必要があります。
「別冊判例タイムズ38・民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準・全訂5版」では、T字路交差点における事故の過失割合に関する修正要素として、以下のものを挙げています。
① 突き当たり路を右左折しようとする加害車両の明らかな先入
「明らかな先入」とは、突き当たり路を右左折しようとする加害車両が先にT字路交差点に進入しており、直進路を直進または右折しようとする車両が、すぐに制動または方向転換すれば容易に衝突を回避できた場合をいいます。
このようなケースでは、直進路を進行する車両側の過失を10%加算します。
ただし、突き当たり路を右左折しとうとする加害車両に一時停止義務違反があった場合は、「明らかな先入」による修正はされません。
② 突き当たり路を右左折しようとする加害車両の一時停止後進入
「一時停止後進入」とは、一時停止規制側の車両が一時停止をし、左右を見て低速度で交差点に進入した状況をいいます。
基本の過失割合では、一時停止規制側の車両に一時停止義務違反があることを前提としていますので、このようなケースでは、一時停止規制のある突き当たり路を進行する車両側の過失を15%減算します。
③ 著しい過失
著しい過失とは、事故態様ごとに通常想定される程度を超えるような過失をいいます。具体的には、以下のようなものが著しい過失にあたります。- わき見運転など著しい前方不注視
- 著しいブレーキ、ハンドルの不適切操作
- 携帯電話やスマートフォンの通話や操作をしながらの運転
- 時速15キロメートル以上30キロメートル未満の速度違反
- 酒気帯び運転
このような著しい過失があった場合には、著しい過失があった側の過失を10%加算します。
④ 重過失
重過失とは、著しい過失よりもさらに重く、故意に比肩するような重大な過失をいいます。具体的には、以下のようなものが重過失にあたります。- 酒酔い運転
- 居眠り運転
- 無免許運転
- 時速30キロメートル以上の速度違反
- 過労、病気、薬物などにより正常な運転ができないおそれがある状態での運転
このような重過失があった場合には、重過失があった側の過失を20%加算します。
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(2)過失割合に争いがあるときにできること
過失割合に争いがある場合には、被害者としては、以下のような対応が必要になります。
① 証拠を集める
過失割合を争うために、自分の主張を裏付ける証拠が必要になります。そのため、まずは以下のような証拠を集めるようにしましょう。- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
- 事故現場の様子や事故車両の損傷状態がわかる写真
- 警察が作成する刑事事件の記録
- 目撃者の証言
② 保険会社と交渉をする
過失割合に関する証拠がそろったら、保険会社との交渉で適切な過失割合にするよう求めましょう。交渉の際には、証拠を提示しながら自己の主張が正当であることを説得的に伝えていくことが必要です。
③ 裁判をする
交渉では納得できる結論に至らない場合、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起し、訴訟の中で過失割合を争っていくことになります。訴訟では、証拠に基づいて事実認定を行いますので、十分な証拠がなければ、自己に有利な過失割合を認定してもらうことはできません。
そのため、裁判の場面でも証拠が必要不可欠となります。
5、できるだけ早期に弁護士を依頼すべき理由
以下のような理由から交通事故の被害に遭ったときは、できる限り早く弁護士に依頼することをおすすめします。
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(1)適切な過失割合を決めることができる
上述した態様のT字路交差点での事故は、双方が動いている状況で生じますので、基本的には被害者側にも一定の過失が生じます。過失割合は、最終的な賠償額に影響しますので、安易に同意するのではなく、状況に応じた適切な過失割合を定めることが大切です。
弁護士であれば、具体的な事故態様や過去の同種の裁判例などを踏まえて、適切な過失割合を主張することができます。適切な過失割合を主張するには、専門的な知識と経験が必要になりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)保険会社との交渉を任せることができる
過失割合について争いがある場合、保険会社の担当者と交渉を行わなければなりません。しかし、保険会社の担当者は、業務として交通事故事案を取り扱っていますので、一般の方よりも豊富な知識と経験を有しています。このような担当者を相手に被害者自身で有利な過失割合を認めさせるのは、非常に困難といえるでしょう。
弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として交渉することができますので、ご自身での対応に不安があるときは、弁護士に保険会社対応を委ねるとよいでしょう。 -
(3)慰謝料を増額できる可能性がある
交通事故の賠償金として支払われる慰謝料には、以下の3つの算定基準があります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準(弁護士基準)
各算定基準における慰謝料の金額は、「自賠責保険基準<任意保険基準<裁判所基準」となっていますので、被害者にとっては、裁判所基準がもっとも有利な基準となります。
しかし、裁判所基準をベースにして示談交渉を行うためには、弁護士に交渉を依頼することが得策になります。すなわち、弁護士に交渉を依頼することで保険会社から提示された慰謝料を増額できる可能性があるということです。
6、まとめ
T字路交差点において、突き当たり路を進行する車両に横から突っ込まれた場合、被害者側にも一定の過失が生じることがあります。交通事故の過失割合は、最終的に賠償金の金額にも影響してきますので、適切な過失割合を主張することが重要です。
T字路交差点での事故に関する過失割合に納得ができないという方は、まずはベリーベスト法律事務所 木更津オフィスまでお気軽にご相談ください。
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