隣地境界線とは?|調べ方や、トラブルを解決するための方法
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隣地境界線をめぐっては、隣人同士でトラブルになるケースがよくあります。
トラブルがこじれてしまった場合はADRや筆界特定制度、境界確定訴訟などによって解決を目指すことになりますが、適正な条件によるスムーズな解決を得るために、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。
本コラムでは、隣地境界線についての概要や調べ方、トラブルの事例や解決手段などをベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、隣地境界線とは
「隣地境界線」とは、ある土地とその隣の土地の境界を画定する線です。
そして、隣人同士の間では、隣地境界線をめぐってトラブルが発生することがしばしばあります。
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(1)隣地境界線と敷地境界線・道路境界線の違い
土地同士の境界を画する線としては、隣地境界線のほかにも「敷地境界線」や「道路境界線」という用語が存在します。
「敷地境界線」は、建築物の敷地の外周のことです。
隣地境界線も、敷地境界線の一種といえます。
建築物の敷地には、隣地に接している部分のほか、道路に接している部分もあります。
「道路境界線」は、建築物の敷地と道路の境界を画する線のことです。
簡単にまとめると、敷地境界線のうち隣地と接している部分が隣地境界線、道路と接している部分が道路境界線となります。 -
(2)隣地住民間に適用される法律上のルール
隣地境界線を挟んで住んでいる住民同士の間では、民法における相隣関係の規定が適用されます。
相隣関係に関する主なルールとしては、以下のようなものが挙げられます。① 隣地の使用(民法第209条)
境界付近における工作物の築造・収去・修繕、境界標の調査や境界測量、枝の切り取りのために必要な場合は、隣地を使用することができます。
② 継続的給付を受けるための設備の設置権(民法第213条の2)
ライフラインの供給を受けるために必要なときは、隣地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用できます。
③ 境界標の設置・保存(民法第223条、第224条)
隣地の所有者同士は、共同の費用で境界標を設けることができます。
境界標の設置・保存の費用は、等しい割合で負担します(ただし、測量の費用はその土地の広狭に応じて負担します)。
④ 竹木の枝の切除および根の切り取り(民法第233条)
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に枝を切除させることができます。
催告したにもかかわらず枝が切除されないとき、竹木の所有者が不明または所在不明のとき、急迫の事情があるときは、越境を受けている側が自ら枝を切除することも可能です。
また、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、越境を受けている側が自らその根を切り取ることができます。
⑤ 境界線付近の建築の制限(民法第234条)
建物を築造する場合、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければなりません。
⑥ 目隠し(民法第235条)
境界線から1メートル未満の距離に置いて、他人の宅地を見通すことのできる窓・縁側(ベランダを含む)を設ける場合は、目隠しを付けなければなりません。
など
2、隣地境界線の調べ方
土地上に建物を建造する際には、民法や建築基準法に関係するため、隣地境界線を調べることが必須となります。
以下では、隣地境界線を正しく把握するための調査方法を解説します。
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(1)地積測量図を取得する
「地積測量図」とは、一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面です。
不動産登記規則によって記録すべき事項が定められており、法務局にて保存されています。
地積測量図には筆界点の座標値や境界標の表示が記録されています。
これらの記録を参照すれば、隣地境界線の位置を特定可能です。
地積測量図は全国各地の法務局で取得できるほか、「登記・供託オンライン申請システム」を通じてオンラインで請求することもできます。 -
(2)境界標を確認する
隣地との間に境界標が設置されている場合は、その位置を確認することも必要になります。
もし境界標の位置と地積測量図の記録がずれていると、隣地境界線をめぐるトラブルが発生するリスクがあります。
このような場合には、隣地所有者との間で交渉を行って、隣地境界線の確定を図りましょう。 -
(3)境界確認の書面を参照する
隣地所有者(または過去の所有者)との間で境界確認の書面(覚書など)を締結している場合、その書面に従った隣地境界線が適用されます。
境界確認書面の有無を確認したうえで、それが有る場合にはその内容を参照して隣地境界線の位置を特定しましょう。 -
(4)土地家屋調査士に測量を依頼する
法務局に正確な地積測量図が保存されておらず、境界確認書面もない場合は、土地家屋調査士に境界確定測量を依頼しましょう。
土地家屋調査士は客観的・専門的な観点から測量を行うため、公平に隣地境界線の位置を確定することができます。
3、隣地境界線に関するトラブル事例
隣地境界線をめぐっては、さまざまなトラブルが発生しています。
以下では、隣地境界線に関して発生することが多いトラブルについて紹介します。
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(1)購入した土地の一部を隣人が使用していた
隣地境界線をめぐるトラブルのなかでもとくに典型的なものが、建物を建てる目的で土地を購入したらその一部を隣人が使用していた、という事例です。
このようなトラブルでは、隣地境界線に関する認識の齟齬(そご)に加えて、隣人による土地の時効取得が問題となることがあります。
購入した土地の権利を一部失ってしまう事態を防ぐために、早い段階から弁護士に相談しましょう。 -
(2)境界標が見当たらず、境界を特定できない
天災地変などが原因で境界標が損壊・紛失してしまい、隣地境界線を特定できないという事例もよくあります。
前述のとおり、隣地境界線を特定する手段は、境界標の確認だけではありません。
法務局で地積測量図を取得する、境界確認書面をチェックする、土地家屋調査士に測量を依頼するなどの方法で確認できる可能性があります。
状況に応じた手段を用いながら、隣地境界線を特定できるかどうか検討しましょう。 -
(3)地積測量図と境界標がずれている
地積測量図の記録と境界標が互いに異なる隣地境界線を示している場合は、実際の隣地境界線がどこであるかが問題となります。
過去に境界確認書面が締結されていれば、その定めに従えば問題ありません。
もし境界確認書面がない場合には、土地家屋調査士に測量を依頼して隣地境界線の確定を行いましょう。
4、隣地境界線に関するトラブルを解決する手段
隣地境界線に関するトラブルにつき、隣人との間で合意がまとまらない場合には、ADRや筆界特定制度などを利用することで解決を目指しましょう。
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(1)「境界問題相談センター」のADRを利用する
全国の土地家屋調査士会では、境界紛争の解決を取り扱う「境界問題相談センター」を運営しています(名称は地域によって異なります)。
境界問題相談センターでは、土地家屋調査士と弁護士を調停人とするADR手続きを取り扱っており、中立的な立場から境界紛争の解決をサポートしてもらえます。 -
(2)筆界特定制度を利用する
不動産登記法第123条以下では、法務局の筆界確定登記官が行政上の手続きに基づいて隣地境界線を特定する、「筆界特定制度」が定められています。
筆界特定制度の利点は、境界確定訴訟よりも手続きの期間が短い傾向にあることです。標準的には、半年から1年程度で隣地境界線が特定されます。
ただし、境界確定訴訟の判決とは異なり、筆界特定制度による判断には、既判力がありません。そのため、後に境界確定訴訟を提起されれば、紛争が再燃するリスクがあります。
筆界特定制度によって結論を得た際には、隣地所有者との間でその内容および不起訴の合意をして、紛争の蒸し返しを防ぎましょう。 -
(3)裁判所に境界確定訴訟を提起する
隣地境界線について隣人同士の主張が大きく食い違っている場合には、裁判所に境界確定訴訟を提起することになります。
訴訟では、裁判所が証拠に基づいた判断を行って隣地境界線を確定します。
境界確定訴訟では、隣地境界線の位置に関するご自身の主張を補強するような証拠を提出することが重要になります。
適切な証拠を提出しながら訴訟を進めていくためには専門的な知識が不可欠であるため、訴訟の際には弁護士を代理人とすることをおすすめします。
5、まとめ
隣地境界線をめぐっては、塀などの工作物の越境や隣人同士の認識の違いによって、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。
隣地境界線について深刻なトラブルに陥った場合には、法律の専門家である弁護士のサポートを受けながら解決を目指しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、境界紛争に関するご相談を随時受け付けております。
隣人との間で境界をめぐるトラブルが生じたときは、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
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