離婚時の年金分割を拒否された場合の対処法とは?
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木更津市が公表している「木更津市統計書」によると、令和6年の木更津市で成立した離婚件数は239組でした。
離婚時に取り決めるべき項目のひとつに「年金分割」がありますが、年金分割の請求をしても、相手から拒否されてしまうケースもあります。
本コラムでは、年金分割を拒否されてしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。
1、離婚の際には年金分割を請求できる
離婚の際には、原則として「年金分割」を請求することができます。そもそも年金分割とはどのような制度なのでしょうか?
以下で、年金分割の基本を解説します。
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(1)年金分割とは?
「年金分割制度」は、離婚時に夫婦が婚姻期間中に納めた年金保険料に基づく厚生年金の記録を分割し、夫婦それぞれの年金に反映させる制度です。
年金分割が行われると、婚姻期間中における厚生年金の支給額の計算の基準となる「標準報酬月額」や「標準賞与額」の記録が、当事者間で分割されます。
年金分割をしなかった場合、年金受給時に受け取れる年金額が減ってしまうため、特に長期間専業主婦(主夫)だった方にとっては非常に重要な手続きです。 -
(2)夫婦が納めた厚生年金が分割の対象
年金分割の対象になるのは、あくまで「厚生年金」であり、「国民年金」は対象外です。
また、対象になるのは「婚姻期間中に納めた厚生年金」のみで、婚姻前や離婚後に納めた分は年金分割の対象にはなりません。 -
(3)合意分割と3号分割の方法がある
年金分割には「合意分割」と「3号分割」という2つの方法があります。
① 合意分割
「合意分割」は、夫婦双方の合意、または裁判手続きによって按分割合を定めて分割する方法です。按分割合は、当事者の合意で決めるか、合意がまとまらない場合は家庭裁判所が決めます。
裁判所が定める場合、保険料納付に対する夫婦の寄与は特段の事情がない限り同等とみなされ、原則として按分割合は0.5(2分の1)とされます。
② 3号分割
「3号分割」は、国民年金の第3号被保険者(専業主婦やパート勤務で配偶者の扶養に入っている者)であった配偶者からの請求により、相手方の厚生年金記録の分割をする方法です。分割割合は一律で2分の1ずつになります。
合意分割との大きな違いは、「夫婦の合意は必要ない」という点です。合意分割は夫婦の合意が必要であり、手続きも夫婦で行う必要がある一方、3号分割は合意が不要で手続きも請求者のみで行うことができます。
また、年金分割の対象期間も違います。合意分割では「婚姻期間全体」が対象になる一方、3号分割では「平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間」が対象です。したがって、平成20年4月1日より前の年金納付分については3号分割の対象にはなりません。
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(4)手続きと請求期限
合意分割も3号分割も、「年金事務所」または「年金相談センター」に対して「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」を提出する必要があります。
この請求は、原則として離婚した日の翌日から2年以内に行わなければなりません。ただし、この期間内に審判等の申立てをした場合は、調停成立や審判確定の日から6か月以内に延長されることがあります。
2、離婚の際の年金分割拒否は可能?
離婚時の年金分割について、「請求しない」という夫婦間の合意は、公序良俗に反するなどの特段の事情がない限り有効と解されることがあります。
しかし、年金分割請求権は厚生労働大臣等に対する「公法上の請求権」です。そのため、たとえ当事者間で「請求しない」と合意していたとしても、その合意に反して後から年金分割の請求がなされた場合、それを法的に止めることはできません。
相手が年金分割に応じてくれない場合は、離婚調停や離婚裁判、あるいは年金分割調停などの法的手続きを通じて、分割請求を行う必要があります。
調停とは、家庭裁判所において調停委員の仲介のもとで話し合い、問題を解決するための制度です。
なお、離婚裁判は離婚調停を行ってから提起する必要があります。
裁判所で年金分割が認められる場合、分割割合は原則として「2分の1ずつ」です。
ただし、特別な事情がある場合は、例外的に分割の割合が変更されることもあります。ここでいう「特別な事情」とは、保険料の納付に対する夫婦の寄与の程度を同等にみることが著しく不当であるような場合を指します。
もっとも、こうした特別な事情が裁判で認められるケースは非常にまれです。たとえば長期間の別居を理由に「寄与分が同等なのは不当だ」と裁判で訴えたとしても、それだけでは特別な事情には該当しない可能性が高いでしょう。
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3、離婚時に年金分割を拒否できる(されてしまう)ケースとは?
原則として、離婚時に年金分割の請求を拒否することはできません。しかし、例外的に年金分割が認められない、または請求しても拒否されてしまうケースもあります。
ここでは、主な3つのケースを解説します。
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(1)国民年金しか加入していなかった
前述のとおり、年金分割の対象は「厚生年金」のみであり、「国民年金」は対象外です。
そのため、夫婦双方が婚姻期間中に国民年金しか加入していなかった場合、分割の対象となる年金が存在しないため、請求しても年金を受けることはできません。 -
(2)離婚から2年が経過した
年金分割には請求期限があります。原則として、離婚した日の翌日から2年経過すると年金分割請求は認められません。
また、離婚後に相手が死亡した場合、死亡した日から1か月以内に請求しないと年金分割ができなくなってしまうため、注意が必要です。 -
(3)加入期間が10年未満
年金を受給するためには、10年以上保険に加入している必要があります。そのため、加入期間が10年未満の場合、たとえ分割されたとしても年金を受け取ることができません。
4、離婚トラブルを弁護士に相談すべき3つの理由
離婚に関するトラブルを抱えた場合、弁護士への相談を強くおすすめします。
以下では、弁護士に相談すべき3つの主な理由について解説します。
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(1)法的な知識・経験に基づいたアドバイスを受けられる
離婚するためには、財産分与や慰謝料、年金分割、子どもがいる場合は親権、養育費、面会交流など、さまざまな離婚条件を決めなければなりません。これらの交渉や判断には、法律知識が不可欠です。
たとえば、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を離婚時に分ける「財産分与」を正確に行うためには、対象財産を把握した上でどのように分けるか話し合う必要があります。
しかし、自分だけでは何が対象財産にあたるのか、どう調べればいいのかわからず、正確な対象財産を確定できずに結果として財産分与で損をしてしまうというケースもあるのです。
弁護士に相談すれば、法的な知識・経験に基づいた的確なアドバイスを受けられるため、自身に不利な条件で離婚が成立することを回避できます。 -
(2)相手方との交渉を任せられる
離婚をするためには「離婚協議」、「離婚調停」、「離婚裁判」の3つの方法がありますが、もっとも多く利用されているのが夫婦間の話し合いによって離婚を成立させる「離婚協議」です。
協議離婚を成立させるためには、相手方との合意が必要となります。しかし、感情的な対立がある場合や、DVやモラハラといった事情がある場合、当事者同士での冷静な交渉が困難となるケースも多く見受けられます。
弁護士に依頼することで、交渉はすべて弁護士が代理で対応します。依頼者が相手方と直接やりとりをする必要がなくなるため、精神的な負担を軽減しつつ、スムーズな解決が期待できます。 -
(3)調停や裁判に発展した場合も対応を一任できる
離婚協議で話がまとまらなければ、調停や裁判といった法的手続きに進む必要があります。その場合も、弁護士に一任することができます。
特に裁判では、当事者の提出する主張書面や証拠に基づいて裁判所が判断を下します。法律の知識がないまま個人で対応することには限界があり、不利な判断が下されるリスクも高くなります。
弁護士に依頼すれば、法的知識と経験に基づいた的確な主張・反論をすることができるため、有利な結果につながる可能性が高まります。
5、まとめ
年金分割は、将来受給する年金額に大きな影響を与える重要な手続きです。
対象となるのは、婚姻期間中に納付された厚生年金のみであり、婚姻前や離婚後に納めた分は分割対象にはなりません。
分割方法には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、いずれの場合も、年金事務所や年金相談センターに所定の請求書を提出する必要があります。この手続きを行わなければ、たとえ当事者が年金分割に合意していても、年金の分割は実現しません。
こうした複雑な条件や手続きが関わるため、離婚を検討されている方や、年金分割について不安がある方は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
年金分割だけでなく、財産分与や親権、養育費など、離婚に伴うあらゆる問題について法的知識に基づく適切なアドバイスを受けることができます。
ご相談の際は、ぜひベリーベスト法律事務所 木更津オフィスまでお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
