離活とは? 離婚準備で後悔しないためのチェックリストを弁護士が解説
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木更津市の公表している「木更津市統計書」によると、木更津市では令和6年に239組の離婚が成立しました。
離婚を決断したとき、すぐに離婚意思を相手に伝えるのは得策ではありません。離婚活動、いわゆる「離活(りかつ)」をして、離婚に向けた情報収集、財産の把握、生活基盤を整えるための就労準備などを行っていくのがおすすめです。
本コラムでは、離婚準備で後悔しないための「離活チェックリスト」や離婚の進め方についてベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
1、離活とは?
「離活」とは、離婚活動を略した造語で、離婚に向けて行う準備活動のことを指します。
離婚を決断した段階で相手に感情的に離婚を切り出してしまうと、自分に不利な離婚条件に合意してしまう、離婚に応じてもらえない、離婚後の生活が苦しくなるといった可能性が高いため、事前準備の有無が結果を左右するといっても過言ではないでしょう。
感情的になりやすい離婚を冷静に進めるためにも、事前準備である「離活」が重要なのです。
2、有利に離婚を進めるための離活チェックリスト
自分に有利に離婚を進めていくための離活チェックリストをご紹介します。
□ 法定離婚事由の有無
□ 離婚原因となった証拠の収集
□ 財産の把握
□ 家計管理の準備
□ 就労の準備
□ 子どもに関すること
□ 別居するかしないか
リストの内容について詳しくみていきましょう。
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(1)法定離婚事由の有無
もし相手と離婚についてなかなか折り合えず裁判に発展した場合、「法定離婚事由」がなければ離婚できません。
「法定離婚事由」は、民法770条1項に規定されている裁判で離婚が認められる離婚原因のことです。以下の5つのうちのどれかに該当すれば、裁判官に離婚が認めてもらえる可能性があります。一 配偶者に不貞な行為があったとき
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(※)
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(※)もっとも、令和6年の法改正(施行は令和8年4月1日予定)により、上記の四は削除されるに至りました。これにより、配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないという事実だけでは、離婚を請求することはできなくなりました。
ただし、配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合に離婚がまったく認められなくなったわけではありません。強度の精神病に起因する事実(例えば、DV、長期間の別居、育児や介護の放棄など)が、上記の「五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する場合には、裁判上の離婚が認められる可能性はあります。
自分の離婚原因がどれに該当するかわからない場合は弁護士にご相談ください。 -
(2)離婚原因となった証拠の収集
離婚原因が相手のDVやモラハラ、不貞行為などの場合、証拠の収集をしておくことが重要です。
証拠を集めておくことは、離婚条件で有利になる、慰謝料請求ができる、裁判で有利な判決が出るなどのメリットにつながります。
たとえば離婚原因がDVの場合、怪我の患部の写真や医師の診断書、暴行を受けているときの録音・録画などが有効な証拠になるでしょう。
不貞行為の場合は、肉体関係がわかる写真や動画、不倫していることがわかるメールやSNS、クレジットカードの明細書などが有効な証拠になりますが、自分で調べることが難しい場合、興信所や探偵事務所に依頼すれば、報告書が有効な証拠になります。 -
(3)財産の把握
離婚する場合は「財産分与」に向けて預金・不動産・保険などの共有財産を把握しておくことも重要です。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた共有財産を、離婚時に原則2分の1ずつ分けることをいいます。「長年専業主婦(主夫)だったけど財産分与は請求できるの?」と不安に思われる方もいますが、財産分与請求権は専業主婦(主夫)にも認められている大切な権利です。
婚姻期間中に購入した物は基本的に財産分与の対象になるため、預貯金や車、家具家電、宝飾品、家、土地、株式、保険など分けるべき財産をきちんと把握しておきましょう。なお、結婚前の預貯金や、親族からの相続・贈与は、財産分与の対象にはなりません。
また、熟年離婚をする際に特に重要になるのが「年金分割」です。年金分割とは、婚姻期間中の夫婦の年金保険料納付額に対応する厚生年金記録を離婚時に分割して夫婦各自の年金にする制度のことを指します。
長年専業主婦(主夫)をしていた場合は年金分割をしないと受け取れる年金額が減ってしまうため、必ず年金分割は要求しましょう。
さらに、定年前の離婚であっても将来的に退職金が支払われる見込みが高い場合は、離婚日または別居日時点で退職した場合に支給される退職金について財産分与の対象となりますので、退職金の分与も請求しましょう。 -
(4)家計管理の準備
婚姻中に共通口座を利用している場合、自分名義の別口座を開設しておく必要があります。
相手方が勝手にお金を引き出したり、口座を凍結したりするリスクに対応する必要や、別居や離婚後の生活費の管理のために必要だからです。
もっとも、婚姻期間における同居中に夫婦の協力によって築いた貯金は、口座名義に関わらず夫婦の共有財産となり財産分与の対象となるため、自分名義の口座に多額のお金を移しても、財産分与の対象外になるわけではありませんし、一度に多額の共有財産を自分名義の口座に移動させると、財産隠しと疑われる可能性があるためご注意ください。
また、離婚後の生活を考えて生活費を見直しておくことも大切です。離婚後の家賃や光熱費、食費、子どもに関連する費用(学費や習い事の費用など)など、生活費が具体的にいくらかかるのか、財産分与で得た金銭や自分の給与、養育費などでまかなえるのか、収支をよく検討しておきましょう。 -
(5)就労の準備
専業主婦(主夫)の場合、離婚後の生活のために就労する必要があります。パートタイム勤務の場合は正社員になることも検討した方がよいでしょう。
さらに、引っ越す場合は転職を視野に入れることも必要です。離婚後の暮らしや生活費を考えて就労の準備をしましょう。 -
(6)子どもに関すること
若年離婚の場合、特にトラブルになりやすい傾向があるのが子どもに関する決めごとです。
現行法上、子どもがいる夫婦が離婚する場合は単独親権になるため、どちらが親権を持つのか決める必要があります。
親権を望むのか、自分のケースの養育費相場はいくらなのか、支払期間はいつまでにするのか、面会交流(離婚後非親権者と子どもが交流すること)はするのか、頻度や方法はどうするのかなど、具体的に考えておきましょう。
ちなみに、面会交流は子どものためにも大切な権利であるため、私的な感情から「子どもを会わせたくない」と拒否することはできません。
なお、令和8年には「共同親権」が導入される予定であるため、離婚時に単独親権にするか共同親権にするか選択できるようになります。 -
(7)別居するかしないか
離婚前に別居するのかどうかも決めておきましょう。
別居する場合どちらが引っ越すのか、新しい住まいはどこにするのか、子どもと引っ越す場合は転校の必要があるのかも含めて考えておく必要があります。
お問い合わせください。
3、離活後に離婚を切り出す方法・タイミング・進め方
離活が完了し、心の整理や生活の準備が整ったところで、離婚を切り出すタイミングや離婚の進め方について検討します。以下では、離婚を切り出す際の注意点と、具体的な進め方について解説します。
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(1)離婚を切り出す方法・タイミング
離婚を切り出す際は、以下の方法・タイミングに配慮するとよいでしょう。
- 互いに冷静に対話できる環境
- 子どもがいない時間帯
- 必要に応じて第三者を入れる
- 別居中の場合は「内容証明郵便」を検討する
まずは感情的にならず、冷静に対話できる環境を整えることが重要です。
勢い任せに感情をぶつけてしまうと相手も感情的になり、話し合いがこじれてしまうリスクがあります。加えて、相手が仕事に追われている、病気や怪我で精神的に追い詰められている状況も避けましょう。
また、離婚の話は子どもがいないタイミングで切り出しましょう。子どもの前で離婚を切り出してしまうと、子どもの心を深く傷つけてしまうおそれがあります。
注意として、相手がDV・モラハラ気質がある場合、話し合いは第三者がいる状況で行うことが大切です。自宅で離婚を切り出した場合、逆上した相手に暴力を振るわれるおそれがあります。そのため第三者を交えて話す、カフェやレストランのボックス席で切り出す、といった方法がおすすめです。
別居中の場合は、相手に本気を伝えるためには「内容証明郵便を送付する」という方法が有効です。離婚意思や離婚条件などを提示して後日話し合いましょう。相手と会いたくない場合は弁護士を通して相手との交渉を進めていくことをおすすめします。 -
(2)離婚の進め方
離婚の一般的な進め方は、「協議→調停→訴訟」の順に進めていきます。
① 協議離婚
最も利用されている離婚方法が離婚協議(夫婦の話し合い)です。離婚協議であれば双方が合意すれば離婚できるため、裁判と比べて費用・時間がかかりません。
協議で済ませたい場合は離活を入念に行い「裁判になっても裁判費用がかかるだけだから話し合いで済ませた方がよさそうだ」と相手に納得してもらえるように証拠を提示しながら冷静に話し合うことが大切です。
② 離婚調停
協議で合意できなければ離婚調停という裁判手続きが必要になります。
離婚調停も協議同様に話し合いで進みますが、調停委員という有識者が夫婦双方に公平な立場から間に入って話を進めてくれるのが調停の特徴です。
③ 離婚訴訟
離婚調停が折り合わなければ離婚訴訟を提起し、裁判官によって離婚トラブルに関する判断を下されることになります。
なお、離婚裁判は原則として離婚調停を行ってからでなければ提起できません(調停前置主義)。調停や訴訟になった場合は弁護士への相談がおすすめです。
4、弁護士に相談することで得られるメリット
離婚を検討し始めた方や、すでに離活を進めている方にとって、弁護士への相談は大きな力となります。
ここでは、弁護士に相談することで得られる主なメリットを、3つの観点から詳しく解説します。
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(1)的確なアドバイスを得られる
離婚は誰にとっても人生の大きな決断です。とはいえ、離活の方法や離婚を切り出すタイミング、話し合いの進め方などは、夫婦の状況によって千差万別です。
インターネット上の一般的な情報だけでは、自分にとって何が最適か判断できず、不安を抱えたまま行動に移してしまう方も少なくありません。
弁護士に相談することで、ご自身の状況に合った実践的かつ法的に的確なアドバイスを受けることができます。不利な条件で離婚に進んでしまうリスクを避けるためにも、離婚に詳しい弁護士の意見を早めに取り入れることが重要です。 -
(2)交渉を任せられる
「離婚をするならなるべく裁判に持ち込みたくない」と考える方は少なくないでしょう。そのためには離婚協議が重要です。
しかし、当事者だけで協議を行うと冷静に話し合いを進めることは難しく、結局交渉が決裂して調停に移行するしかなくなってしまうケースもあります。
そのような場合、弁護士が代理人として交渉にあたることで、感情の衝突を避けつつ、法律に基づいた冷静かつ戦略的な交渉が可能になります。
また、弁護士が介入することで、相手に対して真剣さが伝わり、協議での早期解決につながるケースも少なくありません。 -
(3)裁判手続きを任せられる
話し合いでの解決が難しく、調停や裁判に発展した場合には、より煩雑な法的手続きが必要となります。
調停では調停委員とのやり取り、訴訟では訴状の作成や証拠の提出、法廷での主張など、多くの専門的な対応が求められます。
また、裁判では、自分のケースが法定離婚事由に該当するということを法的に立証しなければならず、適切な主張や証拠の準備が欠かせません。
弁護士に依頼することで、これらの手続きを正確かつ効果的に進めることが可能となり、結果的に不利な判決を避けることにもつながります。
5、まとめ
離活は、後悔しない離婚を実現するための準備期間です。感情だけで突き進まず、冷静に情報と証拠を集めることが大切です。
離婚を決断したら弁護士に相談することで、自分にとって何が最良の選択なのかを知ることができます。ぜひベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士に早めにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
