養育費の支払期間を延長してほしい! 裁判所への申し立て方法と流れ
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木更津市の発表している「木更津市統計書」によると、令和5年に木更津市では250組の夫婦が離婚しました。
子どもがいる夫婦が離婚するときに決めなければならないことのひとつが「養育費」です。離婚時に取り決めておいたとしても「離婚後に事情が変わったため支払期間を延長してもらいたい」というケースは決して少なくありません。
養育費の支払期間を延長する方法についてベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説していきます。


1、養育費の支払期間を延長してもらうことはできる?
離婚時に取り決めていた養育費の支払期間を延長してもらうことはできるのでしょうか?
養育費の一般的な支払期間や、取り決めた支払期間の延長の可否についてみていきます。
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(1)一般的な養育費の支払期間
一般的な養育費の支払期間は「20歳まで」です。そもそも「養育費」とは、社会的・経済的に自立していない未成熟子に対して支払われる費用を意味します。20歳になるまでは未成熟子であると考えられていることから、養育費の支払期間は「20歳まで」が一般的なのです。
ただし、それはあくまでも原則であり、個別の状況などによっても支払期間は異なります。
たとえば、子どもが大学進学を予定している場合は「大学卒業まで」、高校卒業後就職する場合は「高校卒業まで」というように、夫婦で合意すれば支払期間は自由に決めることができるのです。
ちなみに、令和4年の民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが、一般的な養育費の支払期間は原則として従来どおりの「20歳まで」で変わってはいません。法律上の「未成年者」と、養育費が必要となる社会的・経済的に自立していない「未成熟子」とは、同一ではないからです。 -
(2)養育費の支払期間の延長は可能か
「やっぱり大学に進学することになった」「子どもが病気になって20歳を過ぎても自立が難しい」というように、養育費の取り決め時と事情が変わると、養育費の支払期間を延長してもらいたいと考えるのは当然でしょう。
しかし、養育費の支払いに関する取り決めを勝手に変更することはできません。養育費の支払期間延長を希望する場合は、相手との話し合いで同意できれば支払期間を延長することができます。
ただし、話し合いで同意してもらえない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があるため、次章で調停を申し立てる流れを詳しくみていきましょう。
2、養育費の支払期間延長に関して調停を申し立てる流れ
養育費の支払期間を延長するための話し合いがまとまらない場合は、「養育費等の変更調停」を申し立てます。「養育費等の変更調停」では養育費の増額請求や減額請求、支払期間の延長などについて話し合うことが可能です。
それでは調停を申し立てる流れをご紹介します。
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(1)必要書類を用意する
まずは調停を申し立てるために以下の必要書類を用意しましょう。
養育費等の変更調停の必要書類
- 申立書の原本と写し各1通
- 送達場所の届出書1通
- 事実説明書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通
- 申立人の収入関係資料(源泉徴収票、給料明細、確定申告書等の写し)
- 子ども1人につき収入印紙1200円
- 郵便切手
- 非開示の希望に関する申出書(必要に応じて提出する)
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(2)家庭裁判所への申し立て
必要書類が用意できたら家庭裁判所への申し立てを行います。
申し立て先は、「相手の住所を管轄地域とする家庭裁判所」または「当事者が合意して定める家庭裁判所」です。 -
(3)第1回目の調停期日が指定される
家庭裁判所に調停を申し立てると、家庭裁判所から第1回目の調停期日が指定されます。
申し立てから2週間後までに郵便で調停期日が通知され、第1回目の調停期日は申し立てから1か月程度先を指定されることが基本です。 -
(4)裁判所の調停委員との話し合い
調停は裁判官と民間の有識者から選ばれた調停委員2名で構成される「調停委員会」の仲介の元で手続きが進んでいきます。
第1回目の調停期日では調停委員に対してお互いの主張を伝え、争点を整理してもらった上で話し合っていきますが、途中で調停委員から助言や和解案の提示を受けることが可能です。助言も和解案も強制ではないため、納得がいかない場合は和解案を拒否することもできます。
調停の回数は決まっていません。そのため1回目で成立するケースもありますが、何回か調停を行っても合意に至らないケースもあります。合意に至れば「調停調書」を作成し調停手続きは終了です。
話し合いが平行線になってしまったり、相手が調停に欠席したりすることで合意ができない場合は「審判手続き」に自動的に移行します。 -
(5)調停不成立の場合は審判に進み、裁判所が決定する
調停不成立になり「審判」になると、当事者の主張や提出された証拠・資料をもとに裁判官によって養育費の支払期間延長の可否についての審判が下され、審判手続きは終了です。
下された審判の結果に不服がある場合、2週間以内に即時抗告をし、高等裁判所に最終判断を求めることになります。
高等裁判所での決定は、憲法や最高裁判例に反しない限り、原則として確定となり、法的な拘束力をもちます。
お問い合わせください。
3、養育費の支払期間を延長したい場合の注意点
養育費の支払期間を延長したい場合は以下のことに注意してください。
詳しく解説していきます。
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(1)決めた内容は公正証書に残しておく
養育費の支払期間延長について話し合いで合意した場合、合意内容を「公正証書」に残しておきましょう。「公正証書」は公証役場で公証人によって作成される公文書です。私文書である契約書と比べて証拠能力が高いため、合意内容を記載しておけば「言った・言わない」の水掛け論を防ぐことができます。
また、「支払いが滞れば強制執行手続きに入ることに双方合意した」というような強制執行認諾文言を付けて公正証書にすれば、養育費の支払いが滞った場合に、訴訟手続きを経ずに強制執行手続きを行い、相手の財産を差し押さえることが可能です。
養育費の支払期間中に支払いが滞るケースは残念ながら少なくありません。万が一の場合に備えて、「強制執行認諾文言付き公正証書」の作成をご検討ください。 -
(2)延長が必要な理由を明確にする
話し合いで相手に納得してもらうためにも、延長が必要な理由を明確にしておくことが重要です。「子どもが大学進学を望んでいるから」「子どもが病気になって就職が難しいから」というように理由は明確にしておきましょう。
なお、調停や審判では「子どもが大学に進学する」「子どもが病気になって20歳を過ぎても就職が難しい」といった事情の場合、延長が認められる可能性があります。 -
(3)適正な話し合いにするために弁護士への相談を検討する
取り決めていた養育費の支払期間の延長を相手に求める場合は、適正な話し合いをするためにも弁護士への相談がおすすめです。次章で弁護士に相談するメリットを詳しく解説します。
4、養育費の支払期間を延長したい場合は弁護士に相談を
養育費の支払期間を延長したい場合は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
弁護士が代理人となり相手との交渉を進めることで、離婚した相手と直接顔を合わせず交渉をしていくことができます。
また、調停や審判の手続きを任せることもできるため、調停委員とのやりとりや、裁判官に適切な主張・資料の提示などをすることも可能です。
さらに、弁護士は養育費の金額が適正か算出し、判断します。増額できるケースでは養育費の支払期間延長に加えて増額請求をすることもできます。
養育費は子どものための大切な費用です。適正な金額・期間で養育費が受け取れるように、養育費の取り決め時と事情が変わった場合は早めに弁護士に相談しましょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
養育費の支払期間を延長したい場合は、元配偶者との話し合いで同意できれば、期間を延長することが可能です。ただし、話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所へ調停を申し立てる必要があります。
養育費の支払期間延長の交渉を有利に進めるためには、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士に相談・依頼すれば養育費の増額も期待できるでしょう。
お困りの際には、離婚問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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