夫の死後に浮気が発覚したら、不倫相手に対して慰謝料請求することは可能?
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2022年度の千葉県の発表によると、木更津市では228件の離婚がありました。
離婚の原因のひとつに浮気がありますが、通常は夫の生前に発覚するケースが多いでしょう。しかし、なかには夫の死後に浮気が発覚するケースもあります。残された妻や家族にとっては大きなショックですが、この場合、浮気相手に対して慰謝料を請求することが可能です。
ただし、浮気相手に慰謝料を請求するためには条件や注意点もあります。これらをベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。
1、夫の死後でも、浮気相手に対する慰謝料請求は可能?
夫の死後に浮気の事実が発覚した場合、浮気相手に対して慰謝料を請求することは可能なのでしょうか。まずは、民法上どのようなルールが規定されているか確認していきましょう。
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(1)夫の死後でも浮気相手に慰謝料を請求できる
結論からいうと、夫の死後でも浮気相手に慰謝料を請求することは可能です。
浮気や不倫などは、民法上、「不貞な行為」(民法770条1項1号)と呼ばれています。この不貞行為をした夫と浮気相手は、「共同不法行為」(民法719条)を行ったことになると考えられています。
共同不法行為とは、二人以上の者が一緒に法に反する行為です。浮気の場合には、夫と浮気相手が共同不法行為の加害者となり、妻が被害者の立場になります。
共同不法行為によって被害を受けた被害者側は、法律上、加害者のうちの誰に対しても損害全額の賠償を請求することができます。つまり、夫が亡くなっていたとしても、不貞行為によって精神的苦痛を受けたとして、浮気相手に対して慰謝料の全額を請求することができるのです(ただし、後述する求償請求について考慮する必要があります。)。 -
(2)慰謝料請求が認められるのは肉体関係があった場合
慰謝料を請求するためには、「不貞行為」を行っていたことが必要です。
この「不貞行為」とは、夫婦の貞操義務に反する肉体関係・性的関係があった場合をいうとされています。つまり、いわゆるプラトニックな関係、キスをした・手をつないでいた・何度も食事に行っている、ということだけでは、不貞行為にはあたりません。
したがって、夫の死後、スマホなどから浮気相手の写真やメールのやり取りが見つかったとしても、肉体関係があったことを十分に推測させるような内容のやり取りでなければ、慰謝料請求が認められる可能性は低いといわざるをえません。
2、浮気相手に慰謝料を請求する場合の注意点
浮気相手に慰謝料を請求する場合には、以下のような注意点があります。
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(1)浮気の証拠が必要になる
慰謝料請求を認めてもらうためには、不貞行為の証拠が必要です。
すでに夫が亡くなっている場合は、遺品の中から証拠を集めることになります。たとえば、肉体関係を推測させるLINEやメールのやり取り、写真や動画等が証拠になりえます。それ以外にも、クレジットカードの利用明細を確認することで、ラブホテルの利用があったことなどを確認することができるかもしれません(一緒にラブホテルに行った相手がわかる証拠も必要になりますが)。
さらに、慰謝料の金額を決める際には、浮気の期間等も大きな判断材料になります。そのため、可能な限り過去にさかのぼって証拠を探すことが重要になります。 -
(2)夫婦関係が破綻していた場合には慰謝料請求が認められない
浮気の証拠が見つかったとしても、浮気当時に夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料請求が難しくなります。不貞行為を理由とする慰謝料請求は、「平穏な夫婦関係」を侵害したことによって生じた精神的苦痛を慰謝するために認められるものです。そのため、そもそも夫婦関係が破綻していて「平穏な夫婦関係」が存在していない場合には、慰謝料請求は認められないことになるのです。
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(3)浮気相手に「故意」か「過失」がないと慰謝料請求は認められない
慰謝料請求を認めてもらうためには、加害者に故意または過失があったという事情が必要になります。
そのため、夫が既婚者であることをうまく隠し通していて、浮気相手において夫が既婚者であることにまったく気付くことができなかったような場合(それが一般的に不自然とはいえないような場合)には、浮気相手の故意または過失が否定され、慰謝料請求が難しくなることもあります。 -
(4)慰謝料を請求できるのは浮気を知ってから3年間
浮気を理由として慰謝料を請求する場合には、期間の制限、いわゆる時効があります。
民法上、「損害及び加害者を知った時から3年間」、「不法行為の時から20年間」のいずれかで早い方の期間が経過すると、もはや慰謝料は請求できなくなります(民法724条)。そのため、たいていの場合には、浮気を知ってから3年間がタイムリミットになるといえます。 -
(5)求償権を相続すると事実上慰謝料を減額される可能性がある
求償権とは、不貞行為を行ったふたりのうちひとりが被害者に対して損害賠償をした場合に、もうひとりの加害者に対して、その加害者が負担すべきであった分を支払え(返せ)といえる権利です。本来、被害者に対する損賠賠償金は、夫と浮気相手が各自の責任の割合に応じて負担すべきものだったので、事後的にその清算を求める権利を認めている、ということです。
この求償権も相続の対象となる権利ですので、夫に浮気をされた妻が夫の財産を相続した場合は、浮気相手からの求償請求に応じなければならない夫の義務も相続してしまいます。つまり、被害者であるはずなのに、加害者から求償権の行使をされると、慰謝料の半額程度(責任割合によって変わります)を加害者に支払うことになる可能性があるのです。また、子どもも相続人になっていた場合には、子どもに対しても求償権を行使される可能性があります。
したがいまして、このような場合には、浮気相手に求償権を放棄させる書面を作成してもらうことが重要になります。もっとも、その際には、求償権放棄に応じてもらうため、慰謝料の請求額を減額せざるをえなくなる可能性があります。
3、慰謝料を請求する方法・手順
ここで慰謝料の相場、請求の方法・手順の流れについて確認しておきましょう。
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(1)慰謝料の相場
一般的に不貞行為の慰謝料の相場は、約50~300万円といわれています。ただし、浮気相手だけに請求する場合には、前述した求償権の問題などもあるため、相場より少し安くなる可能性があります。一般的には、浮気が原因で別居ないし婚姻関係破綻に至ったかどうかが金額に大きく影響し、また、「結婚期間が長い、浮気期間が長い、頻度が多い」等の事情も多少の増額要因になりえます。一方で、「結婚期間が短い、浮気期間が短い、不貞行為の回数が少ない」などの場合には慰謝料額が下がる傾向にあります。
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(2)慰謝料請求の方法
慰謝料請求の流れは以下の通りです。
・通知書の送付
まずは浮気相手に慰謝料を請求する通知書を送付し、その後、慰謝料の額について交渉していくのが一般的であり、この通知書を送る際には、内容証明郵便を利用するのが通常です。たいていの場合は、通知書を送ることで相手方からなんらかの返答がありますが、時にはなにも連絡がないこともあります。そのような場合は、早々に提訴に踏み切るか、あるいは再度通知書を送ってみることになります。
・任意交渉
浮気相手が交渉に応じてきた場合には、金額や支払い方法などについて協議することになります。お互いに「この条件であれば合意してもよい」と思える着地点が定まれば、合意書の作成に進みます。相手方の支払いに不安がある場合は、“強制執行認諾文言”を記載した公正証書を作成することも考えられますが、それなりの手間と時間と費用がかかってしまいますし、強制執行の対象とする相手方の財産を把握していなければ、そもそも公正証書を作成する意義があまりありませんので、公正証書まで作成するケースはさほど多くないと思われます。
・裁判
任意交渉(話し合い)で合意に達することができなかった場合は、通常、訴訟を提起することになります。訴訟では法律上の要件に沿った内容の書面や証拠を提出する必要があるため、訴訟の準備にはそれなりの知識や労力を要します。また、判決ないし訴訟上の和解に至るまでには半年から1年以上かかるのが一般です。
4、夫の死後、浮気が発覚した場合は弁護士に相談を
夫の死後に浮気が発覚した場合には、弁護士に相談するようにしましょう。すでに夫が亡くなっていたとしても、浮気相手に慰謝料を請求することができるかもしれません。しかし、そのためには、証拠収集や浮気相手との交渉、場合によっては訴訟まで対応しなければならなくなり、決して少なくない知識や労力が必要となります。
男女トラブルの解決実績がある弁護士に依頼すれば、これらすべての手続のサポートを受けながら交渉を一任することができます。夫の死後に浮気が発覚し、浮気相手に対する慰謝料請求を検討されているのであれば、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
夫の死後、思いもよらぬ秘密が明らかになるということは珍しくありません。中でも浮気は、残された人に大きなショックを与えるものです。浮気相手を訴えたいと考えているのであれば、まずは弁護士に相談してみましょう。
ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスには、離婚や不倫・浮気問題の解決実績がある弁護士が在籍しています。思わぬ浮気の発覚でお悩みの方は、まずは当事務所にご相談ください。まずはじっくりお話を伺い、最善の解決策を提案させていただきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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