持ち家を相続する4つの方法と配偶者居住権について弁護士が解説
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令和5年の千葉県木更津市の出生者数は887名、死亡者数は1702名でした。
亡くなった被相続人が持ち家を所有していた場合、持ち家の分け方について相続人間で揉めてしまうことがあります。弁護士のサポートを受けながら、適切な形でスムーズに持ち家の相続手続きを進めましょう。
本記事では持ち家の相続について、相続手続きの流れや相続の方法、よくあるトラブルなどをベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。


1、相続財産に持ち家があるときの遺産相続の流れ
相続財産に持ち家が含まれている場合に、どのような流れで相続手続きを進めるのかを解説します。
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(1)遺言書の有無と内容を確認する
まずは、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書は、被相続人の遺品に含まれていることがあるほか、公証役場や法務局の遺言書保管所に保管されていることもあります。
遺言書が存在する場合は、原則として遺言書の内容のとおりに遺産を分けることになります。持ち家についても、分割方法が遺言書に記載されているケースがあるので、必ず遺言書がないかどうか確認しましょう。
遺言書が見つかったら、内容を確認してその後の相続手続きに備えます。公正証書遺言と、法務局の遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言を除き、家庭裁判所の検認を受ける必要がある点にもご留意ください。
参考:「遺言書の検認」(裁判所) -
(2)相続人と相続財産を確定する
遺産分割を行うのに先立って、法定相続人と相続財産を確定する必要があります。相続人の特定は、戸籍謄本類を取得した上で漏れなく確定しましょう。
相続人になるのは、被相続人の「配偶者」と、以下の順位の最上位者です。第1順位 被相続人の子 被相続人の子が死亡・欠格・廃除のいずれかによって相続権を失った場合は、さらにその子(=被相続人の孫)が代襲相続人となります。また、被相続人のひ孫以降による再代襲相続も認められています。 第2順位 被相続人の直系尊属(父母) 被相続人との間の親等が異なる直系尊属がいる場合は、最も親等が近い者だけが相続人となります。 第3順位 被相続人の兄弟姉妹 被相続人の兄弟姉妹が死亡・欠格・廃除のいずれかによって相続権を失った場合は、さらにその子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります。
たとえば、被相続人に配偶者と子どもがいた場合、第2位の父母と第3位の兄弟姉妹に相続権はありません。
遺産分割の対象となる相続財産は、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産から、遺言書によって贈与等された財産、および死因贈与された財産を除いたものです。
預貯金・有価証券(証券口座など)・不動産・貴金属類など、さまざまな財産が遺産分割の対象となりますので、見逃さないようによく調べましょう。 -
(3)遺産分割協議を行う
相続人と相続財産が確定できたら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では、相続財産の分け方を話し合って決めます。相続人全員の合意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書は、持ち家の相続登記を申請する際に提出する必要があります。不動産を特定する情報を登記簿の記載に合わせることや、印鑑登録している実印での押印を要することなどにご注意ください。
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割の方法を決めます。調停や審判については慎重な対応を要するので、弁護士のサポートを受けましょう。
参考:「遺産分割調停」(裁判所) -
(4)不動産について相続登記を申請する
持ち家などの不動産を誰が相続するか決まったら、不動産の所在地を管轄する法務局または地方法務局に対して所有権移転登記を申請しましょう。
所有権移転登記を経ていなければ、不動産の所有権取得を第三者に対抗することができません(民法第177条)。また、相続によって不動産の所有権を取得した際には、取得後3年以内に相続登記を申請することが義務付けられています(不動産登記法第76条の2)。
持ち家などの遺産分割が完了したら、速やかに登記手続きを行いましょう。登記申請は、司法書士に依頼するとスムーズに対応してもらえます。
2、持ち家を遺産分割する方法
持ち家を誰かの単独取得とするのではなく複数人で分割する場合には、どのような方法で分割するかを相続人間でよく話し合いましょう。主な分割方法は以下のとおりです。
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(1)現物分割
「現物分割」は、不動産を物理的に分割する方法です。
区分所有建物でない限り、建物を現物分割することは通常困難ですが、十分な広さがある土地であれば、その土地を分筆して現物分割することが考えられます。 -
(2)換価分割
「換価分割」は、不動産を売却して代金(売却益)を分ける方法です。
1円単位で公平に分けられるメリットがある一方で、持ち家を手放さなければなりません。持ち家を維持したい場合は、別の方法を検討すべきでしょう。
また、持ち家を売却したいと考えていても、立地や建物の状態などによっては、なかなか買い手が見つからないケースもあるので注意が必要です。 -
(3)代償分割
「代償分割」は、一部の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。
適切な額の代償金が支払われれば、持ち家を相続する人にとっても、他の相続人にとっても納得感のある遺産分割ができます。
ただし、不動産を取得したい相続人が代償金を用意できない場合や、複数の相続人が持ち家の取得を希望する場合は代償分割を進められないことがある点にご注意ください。 -
(4)共有分割
「共有分割」は、不動産を複数の相続人で共有する方法です。
複数の相続人が持ち家の取得を希望した場合に、妥協案として共有分割が選択されることがあります。ただし、後に共有者間でトラブルが発生するリスクが高いので、共有分割はあまりおすすめできません。 -
(5)配偶者居住権の設定
被相続人の配偶者が持ち家に住み続ける場合は、配偶者が持ち家を相続する方法以外に、配偶者居住権を設定する方法もあります。
「配偶者居住権」とは、被相続人が所有していた建物について、原則として終身の間、配偶者が無償で住み続けることができる権利です(民法第1028条)。遺言書、遺産分割または家庭裁判所の審判によって、配偶者居住権を設定することが認められています。
配偶者居住権を設定すれば、被相続人の配偶者の住居を確保しつつ、持ち家の価値を相続人間で分散させることができます。
相続財産の価値の大半を持ち家が占めているケースなどでは、相続税評価額や遺留分などの観点から相続割合のバランスを図るため、配偶者居住権の活用が有力な選択肢となり得るでしょう。
3、相続財産に持ち家があるときのよくあるトラブル
相続財産に持ち家があるときは、以下のようなトラブルが発生することがよくあります。解決困難なトラブルが発生してしまったら、弁護士に相談しましょう。
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(1)持ち家を取得する人以外の相続人が不公平を感じる
相続財産の価値の大半を持ち家が占めている場合、その持ち家を取得する相続人と、他の相続人の間で不公平感が生まれてしまうことがあります。
十分な額の代償金を支払う、配偶者居住権を設定するなどの方法により、不公平感の解消に努めましょう。 -
(2)分割方法について意見がまとまらない
持ち家の分割方法にはさまざまなパターンがあるところ、各相続人が異なる意見を持っており、分割方法についての協議がまとまらないケースがよくあります。
話し合いを尽くしても合意が得られないときは、家庭裁判所の調停や審判の手続きを利用しましょう。 -
(3)代償分割をしたいものの、代償金が用意できない
持ち家の代償分割を行う際には、代償金を用意できるかどうかが重要なポイントです。
持ち家を取得する人が十分な資金を有していない場合は、財産の処分、親族からの援助、金融機関からの借入れなどによって資金を確保する必要があります。
4、遺産相続の悩みを弁護士に相談するメリット
持ち家の分割方法について揉めてしまっているなど、遺産相続の悩みを抱えている場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、適切な遺産分割の進め方について客観的な視点からのアドバイスを受けられます。相続人や相続財産の調査、遺産分割協議などの面倒な相続手続きも、弁護士に依頼すればスムーズに進めることができるでしょう。手続きや必要書類の提出漏れなどのミスも防ぐことができ、労力やストレスも大幅に軽減されるでしょう。
遺産相続についてのお悩みは、自分だけで抱え込むことなく、速やかに弁護士へご相談ください。
お問い合わせください。
5、まとめ
持ち家を遺産分割する際には、現物分割・換価分割・代償分割に加えて、配偶者居住権を設定する方法などが考えられます。
持ち家の分割方法に関しては、相続人間で意見が食い違うことも多いのが実際です。遺産分割協議がまとまらないときは、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。持ち家の相続手続きの進め方が分からない方や、相続人間でトラブルが発生している方は、お早めにベリーベスト法律事務所 木更津オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています