養子縁組していない子どもへの相続方法は? 注意点を弁護士が解説

2025年09月01日
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養子縁組していない子どもへの相続方法は? 注意点を弁護士が解説

令和6年4月時点で、木更津市の65歳以上の高齢者人口は約3万7966人となっており、総人口に占める割合は約27.8%となっています。

養子縁組していない子ども(配偶者の連れ子)には、自分が亡くなった際に遺産を相続する権利がありません。しかし、相続する方法がないわけではありません。養子縁組していない子どもに財産を与えたいなら、遺言書の作成や生前贈与、養子縁組などを検討しましょう。

本記事では、養子縁組していない子どもに遺産を相続させる具体的な方法などを、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。

出典:「高齢者人口等の統計データ」(千葉県)


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1、養子縁組していない子ども(連れ子)は遺産を相続できる?

配偶者が再婚者である場合などには、自分の子どもではない連れ子がいるケースがあります。

配偶者の連れ子と養子縁組をしていない場合、その子どもは自分が亡くなった際に遺産を相続する権利を持ちません
法定相続人は、配偶者と、子・直系尊属・兄弟姉妹やその代襲相続人(孫や甥・姪など)に限られているため、養子縁組をしていない配偶者の連れ子は、そのいずれにも該当しないのです。

養子縁組をしていない配偶者の連れ子に遺産を相続させるためには、次のような方法を講じる必要があります。

2、養子縁組していない子どもに遺産を相続させる方法

養子縁組をしていない配偶者の連れ子に財産を渡す方法には、次のようなものがあります。

  1. (1)遺言書を作成する

    遺言書を作成すれば、自分が亡くなった際、遺言書の内容に従って自由に遺産を譲り渡すことができます。相続人でない配偶者の連れ子にも、遺言書によって遺産を与えることが可能です。

    遺言書を作成し、事前に遺産の配分を決めておくことは、相続トラブルの防止につながります。元気なうちに遺言書を作成しておきましょう。

  2. (2)生前贈与を行う

    生前贈与も、養子縁組をしていない配偶者の連れ子に財産を渡す方法のひとつです。

    自分が生きているうちに、配偶者の連れ子に対して財産を贈与します。ただし、贈与税は相続税よりも高額になる可能性があるため、税負担を考慮した上で実施する必要があります

    生前贈与のメリットは、遺言書よりも早い段階から財産を活用してもらえる点です。結婚や子育て、住宅の購入など、配偶者の連れ子がまとまった費用を必要としている場合には、生前贈与が有力な選択肢となるでしょう。

  3. (3)養子縁組をする

    まだ配偶者の連れ子と養子縁組をしていないなら、遺産相続に備えるために養子縁組をすることも選択肢のひとつです。

    養子縁組をすれば、配偶者の連れ子は法律上の「子」となり、自分の遺産の相続権を取得します。遺言書などを作成していなくても、養子縁組によって「子」となっていれば、配偶者の連れ子に自分の遺産を相続させることが可能です。

    ただし、養子となった配偶者の連れ子が遺産分割に参加すると、相続トラブルなどのリスクが懸念されます。養子縁組をするだけでなく、遺言書の作成などを組み合わせて相続対策を行いましょう

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3、養子縁組していない子どもに遺産を相続させる際の注意点

養子縁組をしていない配偶者の連れ子に遺産を相続させる場合は、以下に挙げるポイントなどに注意が必要です。弁護士や税理士のアドバイスを受けながら、さまざまなリスクに対して備えましょう。

  1. (1)相続税が高額になることがある

    養子縁組をしていない配偶者の連れ子が、遺言により遺産を受け取る場合(遺贈を受ける場合)、相続財産に対して課される相続税額が通常よりも2割加算されます

    参考:「No.4157 相続税額の2割加算」(国税庁)

    自分が亡くなった際に遺産を相続する場合だけでなく、以下の生前贈与を受けた場合も、連れ子に対して相続税が課されることがあります。
    これらの場合にも、相続税の2割加算の対象となる点に注意が必要です。

    ① 以下の加算対象期間に受けた生前贈与
    相続開始時期 加算対象期間
    ~令和8年12月31日 相続開始前3年以内
    令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日から相続開始日まで
    令和13年1月1日~ 相続開始前7年以内

    ※令和9年1月2日以降に相続が開始する場合、加算対象期間内に取得した財産のうち、相続開始前3年超の期間に取得した財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません。

    参考:「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」(国税庁)

    ② 相続時精算課税の適用を受けた生前贈与
    この制度を選択すると、贈与額のうち、累計2500万円までは特別控除され、贈与税がかからない代わりに、贈与時期に関係なく贈与財産が相続財産に加算され、贈与者が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額に贈与時の価額が加算されて相続税額が計算されます。
    参考:「No.4103 相続時精算課税の選択」(国税庁)

    2割加算を避ける方法
    配偶者の連れ子と養子縁組をすれば、相続税額の2割加算を避けられます。連れ子の相続税負担をできる限り抑えたいなら、養子縁組をすることも検討しましょう。
  2. (2)実子などとの相続トラブルのリスクが高まる

    遺言書などによって、養子縁組をしていない配偶者の連れ子に遺産を与えると、実子などの親族が反発して相続トラブルに発展するリスクがあります。

    具体的には、以下のような相続トラブルが懸念されます。

    ① 遺言無効
    養子縁組をしていない配偶者の連れ子に対して遺産を与える内容の遺言書につき、実子などの親族が無効を主張して争いになることがあります。
    遺言が無効になる場合としては、以下の例が挙げられます。
    • 遺言書の形式に不備がある場合(自筆でない、日付の記載がない、署名押印がないなど)
    • 遺言書を作成した当時において、遺言者に意思能力がなかった場合(重度の認知症にかかっていた場合など)
    • 遺言書が偽造された場合
    など

    ② 遺留分侵害額請求
    養子縁組をしていない配偶者の連れ子の、遺産の取り分が多すぎる場合は、遺留分を有する実子などが連れ子に対して、遺留分侵害額請求を行うことがあります。
    遺留分侵害額請求を受けた連れ子は、請求者に対して一定の金銭を支払わなければなりません。


    遺言無効のリスクを防ぐためには、公正証書遺言を作成することが推奨されます

    公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成するため、形式の不備によって無効となるリスクがほぼありません。また、本人と証人2名が立ち会った状況で公証人が作成するため、意思能力の欠如や偽造などによる無効のリスクも防げます。

    公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるため、紛失や変造を防げる点も大きなメリットです

    遺留分侵害によるトラブルを防ぐためには、実子などの遺留分に配慮して遺産の配分を決めることが望ましいです。

    配偶者の連れ子に対して多すぎる割合の遺産を与えることは、遺留分侵害によるトラブルのリスクを高めます。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な遺産配分のあり方をよく検討しましょう。

  3. (3)数次相続が起きた場合は、養子縁組していない子どもにも相続権が生じる

    配偶者の連れ子と養子縁組をしていなくても、「数次相続」によって連れ子にも相続権が生じるケースがあります。

    「数次相続」とは、先行する相続の遺産分割が完了していないうちに、相続人が亡くなって次の相続が発生することをいいます
    たとえば自分が亡くなった後、遺産分割が完了する前に配偶者が亡くなるような状況が数次相続です。

    養子縁組をしていない配偶者の連れ子は、直接自分の遺産を相続する権利がありません。
    しかし配偶者には、自分の遺産を相続する権利があります。そして、配偶者が亡くなった際には、連れ子は配偶者の遺産を相続する権利を持ちます。

    自分の遺産について遺産分割が終わっていないうちに配偶者が亡くなると、配偶者の相続権を連れ子が相続することにより、結果的に自分の遺産を連れ子が相続できるようになります。
    この場合、連れ子は自分の遺産の遺産分割協議に参加することになります。

    このように、数次相続によって予期せぬ形で、配偶者の連れ子が遺産分割協議へ参加することになると、実子などの親族との間で相続トラブルが発生するリスクが高まります。

    相続トラブルのリスクを防ぐためには、数次相続が発生する可能性も想定した上で、事前に対策を講じておくことが大切です

4、遺産相続について弁護士に相談するメリット

遺産相続についてトラブルが発生した場合や、対応に悩む部分がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします

遺産相続について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • スムーズかつ円満に相続手続きを完了するため、適切な遺産分割の方法を提案してもらえる
  • 遺産分割協議や遺留分侵害などに関してトラブルが発生した場合には、解決に向けた手続きを代行してもらえる
  • 遺言書の作成や生前贈与など、相続対策について具体的なアドバイスを受けられる
  • 亡くなった家族が多額の借金を負っていた場合などには、相続放棄の手続きをサポートしてもらえる
など


相続トラブルを発生させないようにするため、あるいはトラブルの深刻化を防ぐためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

遺産相続に関するお悩みは、早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

養子縁組をしていない配偶者の連れ子は、自分の遺産を相続する権利がありません。連れ子に財産を残すには、遺言書の作成や、生前贈与、養子縁組などの方法を検討する必要があります。

配偶者の連れ子に財産を渡す場合、実子など親族との間で相続トラブルが生じるリスクが懸念されます。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な形で相続対策を行いましょう。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。配偶者の連れ子に財産を与えるための方法についても、個々の状況を踏まえた上でアドバイスいたします。

連れ子による遺産相続の手続きや、相続トラブルを予防するための対策などについて専門家に相談したい方は、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスへご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています