「健康保険を使って」は罠? 交通事故被害者が知るべき正しい対処法

2026年01月29日
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「健康保険を使って」は罠? 交通事故被害者が知るべき正しい対処法

「交通事故統計」では、木更津市における令和6年の交通事故発生件数は348件、死者3名、負傷者466名と報告されています。

交通事故の被害者となった際、治療費の支払いをめぐって相手の保険会社から「健康保険を使って治療してほしい」と言われることがあります。

本コラムでは、健康保険を使うよう求められる理由、健康保険を使うメリット・デメリット、利用時の手続き・必要書類・注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。


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1、なぜ? 保険会社が「健康保険を使ってほしい」と言う2つの理由

交通事故でけがをすると、治療は自由診療で行われるのが一般的です。しかし、加害者側の保険会社から「健康保険を使ってほしい」と言われることがあります。その主な理由を見てみましょう。

  1. (1)治療費の支払いを抑えられるから

    健康保険を使うと、治療費を大幅に抑えられる可能性があります

    自由診療では医療機関が自由に料金を設定できるのに対し、健康保険診療では国で決められた保険点数によって基準額が決まっています。同じ治療でも医療費が少なく済み、保険会社の支払額も軽くなりやすいのです。

    そのため、相手方保険会社は総支払額を抑える目的で健康保険の利用をすすめます。

  2. (2)治療費が明確で、示談交渉や支払いがスムーズになるから

    健康保険の治療費は保険点数に基づく料金で一律に算定されます。保険会社にとって、請求内容が明確で支払額の管理や確認が容易になります

    また、国で決められた基準額で治療が行われることで、過剰請求など支払いトラブルのリスクを抑えられ、示談交渉をスムーズに進めやすくなります。

    そのため、保険会社は被害者に健康保険を利用して治療を受けるよう推奨するのです。

2、交通事故被害者が健康保険を使うメリット・デメリット

健康保険を使うのは、交通事故被害者にとってはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。3つずつご紹介します。

  1. (1)健康保険を使う3つのメリット

    ① 窓口負担が3割のため、治療費の立て替え負担を軽くできる
    被害者が窓口で治療費を立て替え払いする場合、健康保険を利用すると、治療費の負担を大きく減らすことができます

    70歳未満は健康保険で治療費の7割が保険でカバーされ、窓口での支払いは原則3割で済みます。一方で、自由診療の治療費は全額自己負担で、窓口での立て替え払いも全額です。

    健康保険は1点=10円と定められています。しかし、自由診療では点数単価を医療機関が独自に設定でき、1点=20〜30円程度が一般的です。したがって、保険診療の2〜3倍の金額になると考えてよいでしょう。

    たとえば、診療点数6000点の治療を行った場合、以下のような差が出ます。

    自由診療 保険診療
    点数 6000点 6000点
    単価 20円 10円
    総額 12万円 6万円
    窓口負担 12万円 1.8万円(3割負担)

    ② 過失があっても、損害賠償額が減らない可能性がある
    交通事故でけがをした際、被害者自身にも過失があると、過失割合に応じて損害賠償額が減額されます。治療費などの総損害額が自賠責保険の限度額(120万円)を超えると、被害者の過失割合分が差し引かれるのです。

    健康保険を利用して治療費を限度額内に抑えることで、過失相殺によって差し引かれる金額を減らし、損害賠償額の減額を防いだり、最小限に抑えたりできる可能性があります

    ③ 高額療養費制度も活用できる
    健康保険を利用すれば高額療養費制度を活用することができます。高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される仕組みです。

    限度額は年齢や収入に応じて設定されています。たとえば、50歳で年収約450万円の方が、交通事故の治療費として70万円かかった場合、自己負担の上限額は約8万4000円です。残りは健康保険が負担してくれます。

    重いけがや長期治療が必要なケースでは治療費が高額となるため、健康保険を利用して高額療養費制度を活用するのがよいでしょう

  2. (2)健康保険を使う3つのデメリット

    ① 自由診療に比べて治療の制限がある
    健康保険を使う場合、先進医療や自費リハビリなど、保険適用外の治療は受けられません

    また、健康保険で受けられるリハビリにも期間制限があり、骨折や関節のけがなどは受傷から150日、脳血管疾患などは180日までと定められています。それを超えると、原則としてリハビリに対する保険の適用は受けられなくなります。

    ②「第三者行為による傷病届」が必要になる
    交通事故によるけがで健康保険を使う場合は「第三者行為による傷病届」を加入している健康保険(勤務先の健保組合・協会けんぽ・市区町村の国保など)に提出しなければなりません

    しかし、この手続きに協力的でないクリニックや病院もあります。また、書類作成を拒まれるケースもあるため、あらかじめ受診する医療機関に確認しましょう。

    ③ 自賠責保険様式の診断書を作成してもらえない場合がある
    症状固定後、後遺障害等級の申請を行う際は、自賠責保険様式の経過診断書が必要です。しかし「健康保険用の診断書しか作成できない」として、医療機関が自賠責保険の書式で作成してくれないことがあります

    このような場合、カルテや紹介状など別の資料をもとに申請できるケースもあるため、後遺障害申請に詳しい弁護士に相談するのが安心です。

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3、交通事故で健康保険を使う方法と必要書類、注意点

交通事故よるけがでも、手続きを行えば健康保険で治療を受けられます。手続きの窓口や必要書類について確認しましょう。

  1. (1)交通事故で健康保険を使う方法と必要書類

    交通事故で健康保険を使う場合、届出を行いましょう。窓口は、加入している健康保険組合や協会けんぽです。まずは健康保険証などで加入先を確認しましょう。

    届出のための必要書類は、以下の通りです。

    【健康保険利用時の必要書類】
    • 第三者行為による傷病届
    • 事故発生状況報告書
    • 念書
    • 負傷原因報告書
    • 同意書
    • 誓約書
    • 加害者の損害保険加入状況
    • 交通事故証明書
    • 人身事故証明書入手不能理由書(交通事故が物件事故として処理されている場合等)
    • 示談書の写し(すでに示談が成立している場合)
  2. (2)交通事故で健康保険を使うときの注意点

    ① 医療機関によっては健康保険の使用を断られる
    クリニックや病院によっては、交通事故の治療において健康保険の利用を受け付けない場合があります。これは、健康保険による治療は使用できる薬剤や量に制限があることなどを理由に、自由診療を望む医療機関が存在するためです。
    しかし、旧厚生省の通達では、交通事故による傷害も健康保険の給付対象であり、医療機関はこの点について誤解のないよう周知徹底を図るべきとされています。また、健康保険指定医療機関は、患者が健康保険証を提示した場合、健康保険診療を拒否することはできません。
    ですが念のため、健康保険を使いたい場合は、受診前に医療機関へ確認しておくと安心です

    ② すべての治療に健康保険が使えるわけではない
    交通事故による治療であっても、保険が適用される範囲は限られています。先進医療など、健康保険の対象外となる治療もあります。
    治療内容によっては想定外の高額な費用が発生する可能性があるため、治療方針を決める際、どこまで保険が使えるのか医師に確認しましょう。
    また、仕事中や通勤途中の交通事故による治療には健康保険は使えませんので、必ず労災保険の手続きを行いましょう。

    ③ 自由診療から健康保険に切り替えられないこともある
    事故直後、やむを得ず自由診療で治療を始めることもあるでしょう。その場合、後から健康保険適用の治療に変更できるとは限りません。心配がある際は、早めに医療機関に相談してください。

4、治療費も慰謝料も損しないために弁護士に相談を! 弁護士ができるサポート

交通事故でけがをした場合、保険の使い方・手続き・賠償額などに不安を感じることもあるでしょう。そんなときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してください。弁護士は、次のようなサポートが可能です。

  1. (1)適正な賠償額を見極める

    弁護士は、保険会社から提示された慰謝料や治療費が妥当かどうかを法的な観点からチェックします。また、必要に応じて、裁判所基準に基づく金額で交渉ができるよう方針を立てます。

  2. (2)健康保険や損害賠償の手続きを整理する

    交通事故は、健康保険・自賠責保険・任意保険など、複数の制度がかかわります。弁護士は、これらの仕組みを踏まえ、どの制度を使うのが適切かを整理し、手続きの流れを明確にします。また、書類の確認も可能です。

  3. (3)保険会社とのやり取りや示談交渉をする

    被害者が直接、加害者側の保険会社と交渉するのは大きな負担でしょう。弁護士は、法的な立場から示談条件を調整し、被害者の不利にならないようサポートします

    保険会社は交渉のプロであるため、被害者本人が相手の申し出が妥当かどうか判断するのは容易ではありません。弁護士が交渉を進めることで、適正な示談金を受け取ることができる可能性が高まります。

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5、まとめ

交通事故でけがをしたとき、治療費や示談金の手続きを適切に進めるには、健康保険の利用方法や相手方保険会社と必要なやり取りを理解しておくことが重要です。

とくに示談交渉は専門知識が必要で、被害者本人が直接行うことは大きな負担になるため、弁護士に依頼して適正な示談条件での解決を目指すのがおすすめです。

納得できる賠償を受けたい方は、交通事故問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 木更津オフィスへ、まずはご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています