交通事故被害に遭った! 自分の保険を使うには?
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木更津市では、令和5年に交通事故が444件発生し、585人が負傷、3人が亡くなっています。事故件数は前年から53件、負傷者数も60人増えており、日常生活の中で交通事故に巻き込まれるリスクは今なお高いままです。
この記事では、交通事故の被害者が使える保険の種類や、使えないケース、そして弁護士に相談すべき理由について、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスの弁護士が解説します。


1、交通事故の被害者でも自分の保険が使える!
交通事故に巻き込まれたとき、多くの人は「加害者の保険で補償してもらえる」と思うのではないでしょうか。
しかし、現実には加害者の「自賠責保険」や、加害者が任意で加入している「任意保険」だけでは足りないこともあります。
たとえば、ケガが長引いて治療費が高くなったり、事故の影響でしばらく働けなくなって収入が減ったりすることがあります。そういったとき、自分が入っている保険を使えば、補償の不足分をカバーできる可能性があります。
つまり、被害者であっても「自分の保険を使って補償を受ける」という選択肢を持っておくことが大切です。
2、交通事故で被害者が使える保険とは?
被害者が使える保険は、大きく2つの種類に分けられます。
- 加害者が入っている保険
- 被害者自身が入っている保険
この2つをそれぞれ見ていきましょう。
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(1)加害者側の保険
加害者が入っている保険には、「自賠責保険」と「任意保険」の2つがあります。
① 自賠責保険
これはすべての車やバイクに加入が義務付けられている保険です。事故の相手(加害者)が車を所有・使用していれば、ほぼ確実に加入していると考えてよいでしょう。
自賠責保険では、以下のような補償が受けられます。- 治療費
- 休業損害(仕事を休んだことによる収入減)
- 慰謝料(精神的苦痛への補償)
- 死亡した場合の葬儀費用や逸失利益(将来得られたはずの収入)
ただし、自賠責保険の補償には上限があります。たとえばケガの場合は120万円まで、死亡時は3000万円まで、後遺障害については等級に応じて4000万円から75万円といった限度があるため、それ以上の損害については補償されません。
② 任意保険
これは加入が義務ではありませんが、多くの人が入っている保険です。自賠責保険だけではカバーしきれない損害を補うためのものです。
たとえば、- 相手の車の修理費
- 歩行者への損害賠償
- 損害が高額になったときの追加補償
などが含まれます。
また、任意保険には「対人賠償」「対物賠償」「人身傷害保険」「弁護士費用特約」など、さまざまな種類の補償がパッケージになっていることが多いです。加害者がこのような保険に入っていれば、より十分な補償が受けられる可能性があります。 -
(2)被害者自身の保険
事故の相手が無保険だったり、補償が不十分だったりする場合でも、自分が入っている保険を使うことで損害をカバーできることがあります。
① 人身傷害保険
この保険は、事故によって自分がケガをした場合に使えます。大きな特徴は、「自分にも過失がある場合でも、実際の損害額に応じて支払ってもらえる」点です。
たとえば、自分にも過失があったとしても、保険会社が治療費や休業損害、慰謝料などを実費で支払ってくれます。
過失割合に関係なく、被害をカバーしてもらえるのは大きな安心材料です。
② 搭乗者傷害保険
自分の車に乗っているときに事故が起き、ケガをした場合に定額で補償が受けられる保険です。たとえば、「入院1日につき〇〇円」といった形で、あらかじめ決められた金額が支払われます。
この保険は、どちらに過失があるかに関係なく、事故によりケガをしたことが確認できれば、補償が受けられる仕組みになっています。
③ 無保険車傷害保険
事故の相手が自賠責保険にも任意保険にも加入していない場合、またはひき逃げなどで相手が特定できない場合には、この保険が役立ちます。
死亡や重度の後遺障害を負ったときなど、重大な損害を受けた場合に、自分の保険会社が代わりに補償してくれます。
④ 車両保険
こちらは、自分の車が壊れたときに修理費などを補償してくれる保険です。たとえば、電柱にぶつけてしまった、相手の車と衝突して損傷を受けたという場合に使えます。
自損事故でも補償される場合があるので、契約内容を確認しておくと安心です。
お問い合わせください。
3、被害者の保険会社が交渉してくれない場合とは?
交通事故にあったときには、自分が加入している保険を使って補償を受けられ、また、通常、自分の保険会社が相手方と交渉してくれますが、すべての事故で交渉してくれるわけではありません。 特に注意が必要なのが、「もらい事故」と呼ばれるケースです。
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(1)もらい事故では、保険会社が交渉してくれないことがある
交通事故のあとには、多くの場合「示談交渉」という話し合いが行われます。これは、加害者と被害者が「どのくらいの補償をするか」を決める手続きです。
ふつうなら、自分の保険会社がこの示談交渉を代わりにやってくれるのですが、「もらい事故」の場合は事情がちがいます。
もらい事故とは、たとえば信号待ちで停車していた時に、後ろの車に追突されたなど、自分にはまったく過失(運転ミス)がない事故のことです。
このようなケースでは、多くの保険会社が「もらい事故で示談交渉の代行はできない」というルールになっています。言い換えると、保険会社が交渉を代わってくれるのは、自分に少しでも過失がある場合であるという仕組みとなっています。
これは、「もらい事故」の場合には、自分に過失が全くないため、事故の相手方に対する損害賠償責任がなく、自分の「対人賠償」保険や「対物賠償」保険を使って自分の保険会社から相手方に賠償金を支払う必要がないためです。
自分に過失がないため、相手方に賠償するための「対人賠償」保険や「対物賠償」保険を使う必要はありませんが、その他の自身の保険について、相手方から十分な賠償を得られない場合に利用することは問題ありません。
しかし、もらい事故の場合、自分の保険会社が相手方と交渉してくれないため、被害者は次のような負担を抱えることになります。もらい事故で被害者が負う負担
- 相手の保険会社と自分で直接やりとりしなければならない
- 相手から納得できない金額を提示されても、自力で交渉する必要がある
- 弁護士に頼みたくても、費用は自己負担になる可能性がある
つまり、「100%相手が悪いのに、自分が苦労する」という理不尽な状況になってしまうのです。 -
(2)弁護士費用特約があれば、自分の保険を使って弁護士に任せられる
このようなときに助けになるのが、「弁護士費用特約」という保険のオプションです。
これは、自分が入っている任意保険に付けられる追加補償で、交通事故にあったときにかかる弁護士費用を、保険会社が代わりに支払ってくれるというものです。
弁護士費用特約がついていれば、次のようなメリットがあります。弁護士費用特約のメリット
- 弁護士が相手の保険会社との交渉をすべて代行してくれる
- 慰謝料や損害賠償の金額を、法律に基づいて正しく計算・請求してくれる
- 精神的なストレスや時間的な負担を大きく減らせる
弁護士費用特約は、保険会社が弁護士費用について支払ってくれる金額の上限について、通常、300万円と設定されています。
保険会社が弁護士費用について300万円まで負担してくれるため、死亡事故や重度の後遺障害を負った事故等の場合を除き、この特約を使った場合、ほとんどのケースで自己負担は0円です。
加入していれば、実費を気にせず弁護士に相談できるのは大きな安心材料といえるでしょう。
4、交通事故事件を弁護士に相談すべき理由とは?
交通事故にあうと、加害者や保険会社とのやりとりが必要になりますが、すべてを自分だけで対応するのはとても大変です。補償の金額や責任の割合など、法律の知識がないと不利な条件で話が進んでしまうこともあります。
そこで、頼りになるのが交通事故の実績が豊富な弁護士です。ここでは、弁護士に相談・依頼することで得られる主なメリットを3つ紹介します。
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(1)慰謝料の増額が期待できる
交通事故にあったとき、保険会社から慰謝料が提示されることがあります。しかし、その金額は保険会社の社内ルールで決められたものにすぎず、本来もらえるはずの金額よりも低く見積もられていることが少なくありません。
一方、弁護士に相談すれば、法律や裁判例に基づいて、より正確で適正な金額を計算してくれます。保険会社の提示額と大きく差が出ることもあるため、「この金額で本当に妥当なのかな?」と少しでも疑問に思ったら、まずは相談してみるのがおすすめです。 -
(2)適切な過失割合を主張してもらえる
事故の責任がどちらにどのくらいあるのかを示す「過失割合」は、損害賠償の金額を大きく左右します。しかし、事故の内容が複雑な場合や、目撃者がいない場合などでは、相手の保険会社に一方的に不利な割合を提示されることもあります。
そんなとき、弁護士に依頼すれば、事故の状況や資料、裁判例などをもとにして、より公平な過失割合を主張してもらえます。
自分で反論するのは難しくても、専門家の視点があれば説得力のある対応ができます。これによって、自分の過失割合について、相手方保険会社から当初主張された過失割合よりも少ない過失割合で済む可能性があります。 -
(3)相手方との交渉を一任できる
事故のあとは、加害者本人や保険会社と何度もやりとりをしなければならないことがあります。電話や書類の対応に時間がとられるだけでなく、専門的な言葉が飛び交うため、精神的にも大きな負担になるでしょう。
弁護士に依頼すれば、これらのやりとりをすべて任せることができます。相手との交渉や書面のやりとりは弁護士が代行してくれるため、被害者本人は治療や生活の回復に集中できます。また、不利な条件を押しつけられそうになったときも、法律に基づいてしっかりと対応してもらえるので安心です。
5、まとめ
交通事故に巻き込まれると、ケガの治療や車の修理だけでなく、保険の手続きや相手とのやりとりなど、思っている以上にやることが多く、心身ともに負担が大きくなります。
保険にはさまざまな種類があり、加害者の保険だけでは補償が足りないこともあります。そんなときに、自分が加入している人身傷害保険や弁護士費用特約などをうまく活用すれば、より安心して事故後の対応ができるようになります。
また、「もらい事故」などのように、自分にまったく過失がないケースでは、保険会社が示談交渉をしてくれないことがあります。そんなときは、自分ひとりで対応しようとせず、早めに弁護士に相談することが大切です。
交通事故で不安を感じている方、保険の使い方がよくわからない方は、ベリーベスト法律事務所 木更津オフィスまでお気軽にご相談ください。
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